えほんやさんの「きくちちきさんのトークイベント(Zoom)」感想。 | 絵本沼

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静岡県三島市の絵本専門店「えほんやさん」で開催された「きくちちきさんのトークイベント(Zoom)」を聴講。
 

めっさおもしろかった。


講演はリアル対面が一番ではあるけれど、オンライン配信でも、リアルタイムでクローズドな環境だと、受け取る情報量は多い。
それはたぶん、発信側の準備と進行に寄るところも大きいのだろう。


きくちさんの商業出版デビュー作『しろねこくろねこ』(2012/学研プラス)はとても繊細な作品で、本日拝聴して、ご本人もやっぱり繊細な方なのだなあという印象を受けた。

あらためて頁をひらき、この大胆な線は、何千、何万の「採用されたかもしれない線」の山から生まれたのだなと感嘆する。


本作は白猫と黒猫の二匹の猫の物語で、絵にも文にもそれぞれの雌雄を明確に表現している箇所がない。
このことが気になっていたので、Zoomのチャットで本イベントの主催者のふくえ店長とえがしらみちこさん伝えると、きくちさんに尋ねてもらえた。

 

きくちさんは、

  • それは意図的に描いていて、二匹の関係性は、読まれる方がそれぞれ感じられればいいと思います。

という旨の回答をされた。

きくちさんの絵本づくりのポリシーの一端も垣間見える。

 

私が白猫は雌、黒猫は雄となんとなく解釈していたのは、おそらく、『しろいうさぎとくろいうさぎ』(ガース・ウィリアムズ/松岡享子/1965/福音館書店)の刷り込みがあったからかもなあと。

さっきあらためて読んでみると、今度は「白猫は雄なのでは?」と思えた。

読み手の解釈に委ねる部分が多い絵本は、読み解きがいがある。


同じくデビュー作の『やまねこのおはなし』(どいかや/2012/イースト・プレス)は、読んだ時にストーリーにびっくりしたので、不躾ながら、そのことについてもチャットを通じて質問させてもらった。

やまねこの心中をどう判断するかは、読む側次第ではあるのだけれど、僕は、読後めっさ辛かった。

 

ご回答内容については差し控えるが、この、質問をゲストに直接するのではなく、ホストにチャットで伝える仕組みってのは、インタラクティブで気持ちいい。

 


画像は『とらのことらこ』(2018/小学館)と『しろねこくろねこ』の表1で、それぞれ、蝶がアクセントになっている。
『やまねこのおはなし』の表1にも蝶がいる。

きくちさんは蝶にどんな意味を込めたのだろうか。

 

それと、興味深かったのは、きくちさんは絵本作家になる前、骨董店でブーテ・ド・モンヴェル(1850-1913/フランス)の絵本に出会い、それが絵本作家を志すきっかけになったという話。
きくちさんはモンヴェルの原書絵本(楽譜絵本)を手に取って衝撃を受けられたとのお話だったが、それは表現も大きかったけど、絵本の装丁・製本の面も同様だったとのこと。

今日のきくちさんの絵本を手に取ると、なんとなく、なるほどと思う次第。

 

モンヴェルの絵本は一冊だけあったなあと書架を探すと、ほるぷの『ジャンヌ・ダルク』が差さっていた。

私の第一印象は「でかくて長くて単価の高い絵本」だった…。

 

えほんやさん、ありがとうございました。