絵本沼。

絵本沼。

点をつないで線にするように絵本を語りたい。
吉田進み矢、出版絵本学講師、絵本オタク、日本児童文学者協会会員、絵本評論、出版業界。
絵本を細々と研究する日々。

※前回「②_パブリックドメインと親告罪」へ

 

日本では2018年12月に、著作権のふたつの要素、「パブリックドメイン」と「親告罪」について一部変更があった。

参考「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の概要

 

上記にあるようにTPPの余波的なもので、該当箇所をかいつまむと、

  1. 著作権の保護期間が50年から70年に延長
  2. 著作権侵害の一部が非親告罪化(=被害者からの訴えがなくても犯罪成立

ということになる。

 

1の「保護期間20年延長」については、まあ、パブリックドメインには恩恵はあるけれど、権利が残っている方が儲かる人がたくさんいるので、そのうちに「保護期間は更に30年延長して100年にします」となっても不思議やないなあと思っている。

 

2の「非親告罪化」についてもう少しこまかく言うと、「ある3つの要件をすべて満たした場合、権利者からの訴えがなくても侵害罪が成立する」というものになる。

 

その3つの要件とは、

  1. 利用することで対価を得たり、権利者の利益を奪う目的がある場合
  2. 有料の著作物をそのままの形で配布したりコピーしたりする場合
  3. 権利者に本来見込まれる利益を侵害した場合

というもので、もっとざっくり言えば、

  1. ギャラありまたは権利者への迷惑目的
  2. 無断コピー
  3. 実際に迷惑をかけた

という感じか。

 

この3つを満たすものってどんなの?といえば「違法ダウンロードサイト」とか「動画サイトへの無断アップロード」とかで、この法改正以降、そういうのは権利者の訴えが無くても即犯罪成立となった。

 

で、念のため言っておくと、この3つが揃えばNG(=即犯罪成立)にはなるけれど、ひとつだけならやってもいいという話でもない。

 

------------------

 

と、前置きがえらく長くなってしまったが、じゃあ、

 

★絵本の読み聞かせでこの3要件をすべて揃えることって可能なのだろうか?

 

というのを、先日ふと思った次第。

 

 

「絵本の読み聞かせ」という行為において、著者の訴えが無しで著作権侵害罪が成立させることはできるのか?

それを考えることで読み聞かせと著作権についてなにか見えてくるんじゃなかろうか、と。

 

 

※「④_読み聞かせで非親告罪は可能か?」につづく

前回「①_ネズミの壁画」へ

 

私は著作権については、せいぜい、復刊ドットコム時代に必要になって勉強した程度の知識しかない。

 

いろいろ読んで話を聞いていくうちに「著作権って面白い」と感じることが多々あって、特に、

  1. 著作権には保護期間があり、それを過ぎるとパブリックドメイン(著作権なし)になる。
  2. 著作権侵害は親告罪であり、著作権者が訴えないと犯罪にならない。

のふたつの要素は興味深かった。

 

1のパブリックドメインのケースでよく覚えてるのは、サン=テグジュペリの著作権が消滅した2005年の時で、『星の王子さま』が各社からいろんな新約で刊行されたこと。

知名度抜群、原作者印税なしで低コスト。

みんな考えることは一緒で、でも結局、昔っからある岩波書店の内藤訳が一番売れた記憶があって、それ以外で売れたものってなんだったんだろうか。

 

※パブリックドメインについては「児童図書の刊行点数がもっとも多い作家は誰か?」でも触れています。

 

 

2の親告罪については、要は、侵害の罪は著作権者の判断で決まるということ。

無許可の二次創作物(既存作品やキャラクターを使った創作)がたくさん販売されるコミックマーケット(コミケ)があれだけの規模で開催できるのも、この要素が大きい。

 

「黙認」することで世界が豊かになるのはよいことだと私は思う。

ただ、それってバランスが難しいに違いない。

 

※画像は15年ほど前にコミケで買ったうさこ同人誌と今は絶版となっている『ミッフィーどうしたの?』。共に名作。

 

で、日本では2018年12月に、著作権のこのふたつの要素、「パブリックドメイン」と「親告罪」について一部変更されることになった。

 

 

「③_侵害罪成立の3要件。」につづく

あれはたしか中学生の頃、深夜ラジオで「ネズミの壁画」という都市伝説が流れてきて、たぶんそれが、私が初めて権利(ライツ)について聴いた話だったように思う。

 

それは下記のような内容だった。

 

小学校の卒業記念に6年生が力を合わせ、校舎の側面に巨大なネズミの壁画を描くことになった。

 

そのネズミは某社の人気キャラクターで、できあがった壁画は小学校の周囲の人々からの評判も上々だった。

 

しばらく経ったある日、某社から小学校へ郵便が届いた。

 

「なぜ某社から届いたんだろう?」と思いつつ教諭が封を開けると、驚くべき高額のキャラクター使用料の請求書が入っていた。

 

数日後、ネズミの壁画は消されていた。

 

こんな話をこないだ聞きまして、みたいな、軽い口調でDJは話していた。

ラジオ番組はおそらく、浜村淳の「サタディ・バチョン」だったんやなかろうか。

 

 

と、それはさておき、当時の私は単純に「某社こわいなー」と思った。

そしてその後、ライツを扱う仕事をするようになって、某社の対応はおかしなものでもなかったんだと知るようになる。

 

実話かどうかわからないけれど、この「ネズミの壁画」は典型的な著作権侵害になる。

 

そう言えば「アヒルの看板」の話も聞いたことがあるなあ。

 

という感じで、私は著作権の専門家でも法学部卒でも無いけれど、絵本の読み聞かせと著作権についてゆるゆると書いていこうと思う。

 

 

「②_パブリックドメインと親告罪」につづく

 

------------------

※20200515追記

都市伝説ではなく事実で、壁画ではなくプールであるとの指摘を受けました。

ご連絡ありがとうございます。

すみません、完全に私の記憶違いでした…。

記事内容はそのままにしておきます。