「性的虐待の温床」も…脱北者の人権侵害を助長する中国
米国の国際的な人権団体、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が、脱北者5人が北朝鮮に強制送還される危機に瀕していると明らかにし、救出活動への協力を呼び掛けている。
HRWによると、この5人は先月16日または17日に中国当局により逮捕され、吉林省延辺朝鮮族自治州延吉市郊外の国境警備隊に勾留されている。
中国政府は、摘発した脱北者を北朝鮮に強制送還する方針を取り続けており、そのため間接的ながら、北朝鮮の人権侵害を助長する結果を生んでいる。
(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち)
5人のうち3人は、脱北して韓国に暮らすイムさんの家族だ。
イムさんは今月16日、北朝鮮にいる兄弟から電話で「自分と叔母といとこが国境を流れる鴨緑江を越えた」と聞いた。他の2人と合わせて5人で車に乗って遼寧省の瀋陽に向かう途中で逮捕された。
イムさんは現地のブローカーから、中国当局は5人を和龍市に送ろうとしていると伝え聞いたと述べた。和龍市は北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)に接していることから、5人は強制送還されるおそれがある。
HRWは習近平国家主席に「5人を北朝鮮に強制送還しないでほしい」「中国は北朝鮮難民の亡命を認め、逮捕や強制送還されることなく中国領土を通過するようにしなければならない」との手紙を送付した。
ロバートソン局長代理は、中国は国連難民条約、拷問等禁止条約に加盟しており、難民が虐待や拷問を受ける危機にある場合は強制送還してはならないという義務があり、遵守するか否かは国際社会が見守っていると述べている。
仮に5人が強制送還されれば、拷問などの虐待を受ける可能性が高い。とくに脱北した女性に対する取り調べは、性的虐待の温床になっている。
(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も)
ロバートソン氏はまた、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)との電話インタビューで、現在中国で勾留されている脱北者は少なくとも38人にのぼると明らかにした。
さらに実際に勾留されている脱北者は38人よりはるかに多いと思われるが、中朝当局以外は誰も把握できていないと述べた。
一方、HRWが以前明らかにした、今年3月に中国の瀋陽で逮捕され、5月下旬の時点で中国にとどまっていた脱北者8人が、この38人に含まれているかは不明だ。
(参考記事:「中国人の男は一列に並んだ私たちを選んだ」北朝鮮女性、人身売買被害の証言)