まずは今回の旅行の登場人物。全員画家。
うちのダンナ(60歳)
老郝(66歳)今回泊まる家の主人
老王(67歳)北京在住
老张(69歳)北京在住。二日目にやって来た
みんなダンナより年上で、長い付き合いの友人。ダンナを「小强」と呼んでいた。初めて聞いたぞ。普段会うのはほぼ年下だから、呼ばれるときは「老王」か「王老师」。
二日目の朝、ダンナが9時になっても起きない。「みんなお腹空いてるよ。9時だよ」と言って、起こした。私は先に寝たけど、夜中までおしゃべりしてたのかな?「何時に寝たの?」「11時」。10時間も寝る?嬰児か!
朝ご飯を用意していただいた。すごく大きい「鹅蛋」(ガチョウの卵)。塩漬けではないゆで卵。あと、粟のお粥。ちまき。ダンナが「漬物はあるか」って。自分の家じゃないんだから!
テーブルに缶詰「鹿肉栗蘑菇酱」があって、老郝に断らず勝手に開けるダンナ。鹿の肉と栗ときのこの味噌。甘かった。
ダンナが自分のアトリエから持って来た杏(xìng。アンズ)。广西産。唐辛子などの入った香辛料をかけて食べる。香辛料は杏と一緒に箱に入っていたという。
今回は写生旅行に来た。ところが、私達が着いた二日目は老郝の誕生日だった。「今日は夜、宴会だ!」と。ダンナが説明不足だから、私はあとで知ったのだが、「誕生日だ。来い!」と召集をかけられ、来たのが今回のメンバー。「近くもないのにすぐ来てくれてすごく嬉しい!」と老郝は大層喜んだ。
私が初めて来たので、「周りの景色を見せたい」と車で案内してくれた。老郝の車は三菱帕杰罗(ぱーじえるお→パジェロ)。山道、場所によっては相当な傾斜で、ああいうごっつい車じゃないと無理。
このあたり川が多い。
柳河と㴒河が交差する場所。
水の色が二色なのわかる?奥から右へ流れる川と、手前から右へ流れる川とがあり、両者の濁り具合が違う。奥が濁った色。
手前は水が透き通っていて、小さい魚が泳いでいるのが見えた。
次の場所へ。電柱が木。
この日は日曜日。少し観光客がいた。
ダンナと友達はここに何回も来ていて、目的は写生。老王がいう。「秋天好看,现在都是绿的。下雪特别好看」(ここは秋がきれいだよ。今は緑しかない。雪が降ってもきれいなんだ)。
ドライブが終わり、昼食を食べに一番近くの食堂へ向かう。過疎地域。食堂は数軒。スーパーも数軒。それ以外のお店なし。民家ばかり。歩行者なし。
一番近い食堂へ行った。四人で座る。おばちゃんが出て来て、老郝が「簡単でいいから。肉饼ある?麺でもいい」。
おばちゃんが困った顔で「んーーー。作れない」。
え??
作る役目の娘がマージャンに行っていると言う。
ええ??
その店は出た。前夜食べた店へ。この村で一番大きいんだけど、すでに3卓食べ終わって、客は去り、テーブルは片付いていない。個室3つには客がいて、ホールにも二組。店員、忙しすぎて片付ける余裕がない。床にゴミは落ちているし、地獄絵図だったよ。
見ないようにした。一番手前の小さいテーブルに四人で座る。炒饼,西红柿鸡蛋汤を頼む。
老郝の家に戻ったら14時半。15時に出発すると言われた。この日、老张が北京から車を運転して一人でここに来る。12時に出るというので、彼が着いたら一緒に出かけることになった。ところが老张はおじいさんだから、運転速度が遅い。待たずに出発。そこは北京ほどではないが(当たり前だわ)ビルがあり、美術館もある街の中心だった。
ある建物の地下へ行くと、男性が六人くらいいた。髪が薄いのに長髪の人がいた。一見、芸術家風。ありがちだ。この中に現地の書法家協会主席もいるという。前日「王夫人のために席上揮毫会を用意した」と言われた。私、字を披露しに来たわけじゃない。ダンナの写生旅行について来ただけだ。去年山西省に行った時みたいに、山の中でダンナは絵を描き、私は字を書くと思ってやってきた。知らない人なんかどーでもいいのに!
まずはオフィスって感じのところに通されて、中国茶が出て、若いのがスイカを持って来た。紙皿を配られるわけでもないし、一切れがデカいのよ。どうせ夜はものすごいご馳走だ。食べたかったけど、食べなかった。
揮毫開始。まさか人前で書かされると思ってなかったので、私、何も用意してない!何を書こう??まずは主席が書く。上手だわ。当たり前か。
紙にペンで対句が書いてあった。私はそれを書いた。次は自分のインスタ見て、書いたことのある語句を書いた。そしたらスイカを下敷きの上で切った若者が「字を書いて欲しいんですけど」。あんなバカなことした奴にやるか!と本気で思ったけど、まわりが「はい、書いて!」と。書いたよ。
そこにいた全ての人が「では次は私に」と、この私にどんどん指図する。7、8枚書いたところで、印を捺すことになった。ここは自称「ハンコを捺すのが世界一上手い男」のダンナにやらせよう。版画学科出てるから、確かに上手い。ダンナ「我是服务员」。
一番初めの若い子が「ホテルで働いているので、ホテルの名前を書いてください」。なんでおまえだけ二枚?スイカ切ったくせにと思ったけど、書いてあげた。
そのあともずいぶん書かされた。
席上揮毫、終わり。そこから車に少し乗ってホテルへ。
趣味が……。
北京から老张が到着していた。知らない人がすでにたくさん座っていた。計25人。料理が10種頼まれていた。「王老师、あと10頼んでください」と言われ、ダンナは老张にメニューを渡す。老张はレストランを開いていたことがあると言う。え?画家なのに?
老张がメニューを見ている横でダンナが「点清淡的」(あっさりしたものを)と何度も繰り返した。