タイガースのおっちゃん(小説)
2003年阪神優勝前(4月頃)に書き始めた小説です。でも現実の方が早かった。
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第29話 秘密兵器

タイガースの次なる対戦相手はスワローズだが、このスワローズ監督が平にとっては組しにくい相手だった。

なぜなら、自分の野球戦術がこの監督山村一夫から引用することが多かったためだ。

しかも、山村は既に神雷の弱点を研究していたようだ。スポーツ紙に山村発言が「我に策ありと。」大きく見出しを飾っていたが、そのようなところからもすぐにわかる。


神雷は「やれるもんならやってみいや!」と強気だった。

平はこれは神雷を本当に攻略できる自信なのか、単なる牽制なのか内心不安だった。どちらにも受け取れる山村の発言に、中継ぎ若しくは抑えに神雷を使う事を躊躇し始めていた。このように平の決断力をにぶらせる山村のマスコミを通してのこのような戦術も山村にとってはおてのものだった。

しかしスワローズ戦からは新しく千音勇人が1軍に上がる事になっていた。山村は千音に対する情報は何一つとして持っていなかった。平は千音を中継ぎに使う事を決めていた。

スワローズは攻撃力と守備力投手力を比較すれば守備投手力に優れているチームだった。大きな得点を期待はできない。守備面では巧みに隙を突いてくる戦法をどのようにかわすかにある。


中山打撃コーチの加入でタイガースの攻撃力はかなりUPした。実はカープ戦前夜には以下のようなやり取りがなされていた。

カープ戦前夜の首脳陣ミーティング

平「明日からカープ2連戦や、明日から中山が打撃コーチとして就任するけど、今日は打撃力UPに向けてどうすべきか中山中心に意見の交換をしょうか。」

竹堂「中山さんは今のタイガースの打撃力をUPさすためにどう考えてますか?」

中山「正攻法では無理だと考えています。」

竹堂「なにか秘策でもありますか?話は変わりますが中山さんはよくゲーム後半代打起用されてセットアッパーやクローザーから安打していましたよね、あれはどういう工夫をしてたんですか?」

中山「私には秘密兵器があるんですよ。」

そう言いながら一台のモバイルをテーブルの上に置き起動させた。そして開かれたファイルには各球団の投手の名前が連なっていた。ある選手の名前を選択しクリックした。するとモバイル画面が変化し仮想の肉眼からのボール動きが映し出された。その球道を頭の中に叩きこむのである。勿論その求道が何時どのような投球ホームの癖の時に投げられのかも知っての上であるが。1投手につき平均5種の球種が登録されていた。

中山「すべての求道を一度に叩きこむのは難しいので、どのピッチャーと当たるか予想することも大切ですが。」

竹堂「すごいツールや!うちにはセリーグ全投手のデータがあるから、早速カープのデータから構築しせな。」

中山「ただ付け焼刃が通用するのは代打要員でしょう。」

平「中山の言うとおり、リリーフ陣の攻略か先発の攻略で一人一殺的考えで対応すべきやな。」

竹堂「僕の開発したセンサーティーバッティングマシンに接続したら面白いかも知れへん。」

平「ほーーー。それはええ考えや、中山のソフトの画像をゴーグルタイプのモニターに繋いで練習すれば猶ばっちりや。」

竹堂「1週間あれば、タイミングとコースが合えば、球を捕らえたかそうでないかの判定も可能なものも開発できる。」

こうしてカープの投手陣を粉砕した。システムがほぼ完成したのだった。

第28話 中山戦術

中山は控え選手中心に飯山の攻略法を徹底的に教え込んでいた。飯山は技巧派投手で球種もカーブ、シュート、チェンジアップ、シンカー、カットボール他、球速は速くないがバッターのタイミングを上手く外す投球術を心得ていた。

ピッチャーの攻略はバッテリーの攻略でもあるため、キャッチャー大岩のリードの趣向も統計を取りそれを伝達していた。

飯山はコントロールについては正確故に大岩のカウントにおいてのリードと要求する球種を中山はデータ化していた。

そして、球種の多い投手ほど球種においての癖があることも各選手に伝えた。飯山のような投手はストレートを絶対にストライクゾーンには投げないし、落ちる球以外はコースぎりぎりしか投げない。狙いはとりあえずファーストストライクを取るために投げる変化球だ、ファーストストライクを取る変化球は案外チェンジアップやカーブからはいる場合が多い、そしてそのような球種は打っても内野ゴロになりかねない、タイミングを取りづらい球種でもある。しかし中山は敢えてその球種を確実にミートして長打を狙わぬようにとアドバイスしたのだった。更には竹堂ヘッドコーチと開発した秘密兵器でその球種のタイミングを取る練習も行っていた。

2番早川は送りバント3番十条はセンター前にはじき返し、1・3塁そして4番大垣もレフト前にヒットと、短打で一点を先取した。ワンアウト2・3塁で5番堂山は三塁線を破り2ベースヒット、2点追加3-0 6番公文がライト前で4-0 7番キャッチャー浮田は右中間を破り3塁打、5-0 8番廉見は犠牲フライで6-0となり ツーアウトランナー無しで神雷の打順に回った。

神雷「よっしゃー!わいの打順や。」

「タイガース選手の交替をお知らせいたします。9番神雷に変わりまして高杉背番号21」

神雷「わいも偵察かいな!そんなせっしょーな。」

平「これでこちらの思う壷や、すんまへんな大道はん。」

大道「・・・・・。うまくだましやがって。」

結局その日は、10-5とタイガースが逃げ切り勝利した。初回の猛攻が効いたのと、三連星の打順が離されたおかげでカープの攻撃においても決定的なダメージを受けなかった為だった。結局、飯山は初回でノックアウトされ、平は1回裏の守備からいつものスタメンに選手の交代もおこなった。

平タイガースは5連勝と最下位脱出し次のカードのスワローズ戦へと弾みをつけた。

第27話 なんちゅーオーダーやねん!

第二戦に向けて中山バッティングコーチの指導が綿密に各選手になされた。明日カープの先発は飯山だと予想されていた。代打陣を中心に飯山の攻略方法が伝えられた。

一方カープ監督大道は明日のタイガースの先発は再び神雷だろうと予想していた。それは第一戦において神雷は12人しか投げていないイニングにして4回単純計算しても後5回は投げられる。三連星さえ抑えれば最小得点にできるという発想なら、無論明日も先発を神雷で起用し、またポイントリリーフさせるに違いないと踏んでいたのだ。大道は偵察メンバーを使い三連星が明日どの打順か分からなくしてから、神雷先発ならば三連星をばらばらの打順に配置しようと考えたのである。そうすれば後半には神雷を交代させなければならなくなる。

平は明日も先発は神雷だと本人にも告げた、聞いた本人は

「ヤリーーーイ!2連勝や。」とはしゃいでいた。

次の日オーダーは以下のようになった。

カープのスターティングメンバーは

1番ショート   伊藤

2番セカンド   ケリー

3番ファースト  田所

4番ライト    金星

5番サード    新堂

6番レフト    野山

7番センター   石川

8番キャッチャー 大岩

9番ピッチャー  飯山

タイガースのスターティングメンバーは

1番ライト    川西

2番セカンド   早川

3番センター   十条

4番サード    大垣

5番レフト    堂山

6番ファースト  公文

7番キャッチャー 浮田

8番ショート   廉見

9番ピッチャー  神雷

両チームともオーダーを全く変えてきたのだった。大道の予想の神雷先発だけが的中した。カープのオーダーを見てほくそ笑んだ。

そして試合開始直前にカープはオーダーを変更してきた。三連星はわざと離されていた。

1番ファースト  星井田

2番セカンド   ケリー

3番ショート   田所

4番ライト    金星

5番センター   新堂

6番レフト    野山

7番サード    二星

8番キャッチャー 大岩

9番ピッチャー  飯山

大道「これなら神雷をずっとマウンドに立たさないわけにはいかないだろう。」

平はこれを見て更に笑みを浮かべた。

平「やっぱり、ばらばらにしよったか。神雷君残念だねーーー。」

神雷「なーんの今日はフルで9回までマウンドOKOK!」

平「元気やねー君は。」

「さて第二戦は飯山を先発に立てました。飯山は技巧派投手、サイドスローで変化球多彩で過去タイガースは余りこの飯山を打てていません。」

山田「でもすごいオーダーだ、両チームとも、何を考えてオーダー組んだのか分からないね。」

第26話 わいが決めたで初勝利

7回表 9番の神雷からの打順だった。カープのピッチャーは波止場に替わっていた。

7回裏ラッキーなテキサスヒットで1点を返したカープですが、この回からピッチャーを波止場に替えてきました。波止場振りかぶって第一球 神雷に投げました。バントしたーーー。サード突っ込んで送球したがセーフ!」

神雷「へへへ。わいは万能野球人なんやで。」

「神雷ふいをつくセーフティーバントで先頭バッターの高杉に繋ぎました。ここはバントでしょうか?やはりバントのようです。波止場セットから牽制球を執拗にしています。」

山田「1点取った方が勝ちだね、この試合。」

高杉はバント成功でワンアウト2 

2番は古村に代わっている早川ですが、波止場第3球投げました。2塁ランナースタートした。早川はバントした。ボールはファーストの前に転がっている。ファースト捕って一塁送球したが、オーーーと2塁ランナーがホームに突入しようとしているぞ。ファーストあわててバックホーム!クロスプレー、セーフだーーー。タイガース1点返しました。2-1」

山田「1点入ったのはいいけれど、ピッチャーにこんな走塁させるのはどうかしてますよ。」

「確かにおっしゃる通り、せっかく赤い三連星を抑えているのですから茲で怪我でもされたら厄介ですからね。」

「しかし神雷選手投打走に亘って大活躍です。」

9回裏 2-1のままツーアウトランナー2塁でバッターは金星、ワンアウト1塁で星井田の打順から

マウンドには神雷が立っていた。

「カウントはツーナッシング、あと一球コールを背に神雷第3球投げました。ライジンボールに空振り三振、ゲームセット!タイガース2-1でこのカードの初戦をものにしました。そして神雷選手初勝利です。」


第25話 アンラッキーやんけ!

5回裏は4番の金星からの打順だったが、神雷はこれを三振、次の二星も三振に討ち取った。平は再びピッチャーを藤野に交代した。神雷はレフトを守った。

「神雷選手はレフトを守ります。堂山はファーストに移動、ニドーがベンチに下がりました。」

山田「内野の面子を計算してるのでしょうか。しかし器用ですな。」

5回はその藤野が後抑えて、6回は両チームとも無得点、7回裏藤野は先頭バッターのピッチャー木島に代わった代打の鳳にヒットを許しトップのバッター井沢に2塁を打たれてしまった。ノーアウト2・3塁のピンチで二番のケリーがレフトに大飛球を放った。

「これはタッチアップになるか、神雷選手補球してバックホーム!鳳はホームに突っ込む。」

神雷の返球はキャッチャーの頭を超えるほどの高さだったが。急に変化してホーム直前の井沢の目の前にストーンと落ちた。ひるんだ鳳に浮田タッチしてアウト。しかし井沢はタッチアップで3塁に進塁していた。

ここで三連星の三番バッター星井田の打順となる。

「またここでピッチャー交代が告げられました。藤野に代わりレフトから神雷が再びマウンドに上がりました。レフトにはまた堂山がファーストには公文が入りました。」

「さあ今度はセットポジションで第一球なげました。ストラーーーク!ライジンボールで空振りです。ファーストストライクをとりました。1点もやれないこの場面、遊び球は無いようです。」

星井田「くそ、なんとかバットにあたらんものか。」

神雷「ざんねんやけど、目くらめっぽう振ったって当たれへんで。」

第二球もライジンボールでストライク星井田はタイミングを合わせようとするが、捉えどころのない変化についていけない。

「さあ、第三球なげました。」


神雷「とどめじゃー!」

「打ったーーーが、これは内野フライだ討取った。しかししかし ライトも前進前進つっこむ セカンドも追うが、間に落ちた、ポテンヒットになってしまったーーー。井沢生還11同点!」

神雷「な・なんやてーーー。」

「カープラッキーなヒットで神雷から1点を奪いました。しかし、神雷気を取り直して4番金星に対します。」

「ラッキーな奴め、4・5番三振にとったる。」

「神雷金星に第一球投げました。おーーーとバントしたぞ、結構おもしろい所に転がっているぞ、ファースト公文ダッシュ。神雷ファーストにはいるが、送球セーフ、セーフ!ワンアウト1・2塁だ。」

平「ターイム!」

「平監督タイムをとってマウンドに向かいます。」

平「魔物に振り回されるな。」

神雷「イエーッサ!」

平「・・・・・。まあええか。」

5番二星を討取り、6番も野山も三振にしとめ、7回裏を終えた。

第24話 赤い三連星を叩け

広島市営球場でのカープ第一戦

カープのスターティングメンバーは

1番ショート   井沢

2番セカンド   ケリー

3番ファースト  星井田

4番ライト    金星

5番サード    ニ星

6番レフト    野山

7番センター   勝田

8番キャッチャー 大岩

9番ピッチャー  木島

タイガースのスターティングメンバーは

1番ライト    高杉

2番セカンド   古村

3番センター   大垣

4番サード    村本

5番レフト    堂山

6番ファースト  ニドー

7番キャッチャー 浮田

8番ショート   廉見

9番ピッチャー  神雷

神雷が先発だったことは、カープにとっては予想外だった。

しかし、これは平がこのカードを連勝するための大きな布石だったのだ。

昨年も含めてカープの345には大量得点を奪われていた。「赤い三連星」と言われるのは

偶然にもクリンナップ全員の苗字に星が付くからだが、問題はこの3人をどうするかであった。

甲子園同様平と神雷を一目見ようと広島市営球場は満員だった。

1回裏早速三連星の一人星井田がバッターボックスに入った。大きなカーブを見逃し・コース一杯のストレートをファールして2ナッシングと追い込み。三球目はライジンボールで三振。

2回表は4番村本がセンター前にはじきかえし、56番凡退の間に村本は三塁に進塁した。

7番浮田がバッターボックスに入る前に中山バッティングコーチがアドバイスをした。

中山「木島の3球目以降を狙え直球で内角をついてくる。位打線には遊び無く三振をとりにくる。」

中山の言う通り1-1のカウント3球目をレフト前に運んだ。一点を先取した。

3回裏 4番金星にはライジンボールを中心に投げて三振、5番ニ星はライジンボール狙いで打席に向かうが、ストレートとフォークボールで三振にとられた。6番野山の打順で平はピッチャーを交代した。

ピッチャーは山之上に神雷は意外や意外、セカンドに回った。

「神雷選手がセカンドを守りますが、大丈夫なのでしょうか。」

山田「意外と器用なのでしょうね、彼は。」

「野山4球目を打ったが、セカンドゴロ、神雷なんなく捌いてファーストへアウト」

ゲームは1-0のまま進み、山之上は3回裏を3人、4回裏再び3番星井田の打順に回ってきた。

「またここで、ピッチャーが交代になります。セカンドの神雷投手が再びマウンドにセカンドには早川が入りました。」

山田「これは明日も神雷投手を使うんでしょうね、少なくともリリーフはありでしょう。」

「さあ、2度目の3連星との対決です。ロージンを片手にマウンドを足でならす姿が様になっています。」

カープベンチでは監督の大道が渋い顔して戦況をながめていた。こうも見事に三連星を押さえ込む投手がタイガースから出てこようとは思ってもいなかったからだ。

「おーーーと、星井田打ち上げた。もうライジングボールすら投げません。ショートフライでチェンジ。」


第23話 努力の天才

ベイスターズ戦の後には広島市営球場での2連戦が予定されていた。

このカードの第1戦からバッティングコーチが就任する事になっていた。バッティングコーチの名は中山 隆二(35歳)だった。プロ野球経験者で「努力の天才」と異名をもつ苦労人だった。所属チームはパリーグのマリーンズの外野手だった。櫓漕ぎ打法と言う独特の打法でタイミングを取り一度だけだが打率王に輝いた事がある。選手生命は約12年その間レギュラーとして活躍したのは7年と5年もの間2軍で耐え忍び1軍に這い上がってきた選手だった。

平との出会いは中学野球の監督とコーチの関係だった。素質こそないものの努力とその努力をする為のアイデアは天才的なものがあった。野球人は選手に向くものとコーチにむくものの2タイプがある。(勿論両方できるものもいるが。)

中山がコーチに向いているという平自信の理由は次のものであった。

1.不器用であること

2.陽の目を見なかった時期が多い、苦労が多い

3.あれこれ創意工夫で成績を残した。

4.怪我・故障と戦った事がある。

5.エリート意識がない。

6.個性を大切にする。型にはめない。

広島市営球状で中山は試合前選手・首脳全員に挨拶をした。

中山「私は一流のバットマンではありませんでした。しかし今でも一流のバットマンになりたい情熱があります。しかし今となってはその夢を実現することはできません。しかし自分の情熱を注ぎ込み、夢を叶えてみてはと平監督から誘われ、厄介になることを決めました。どうぞ宜しく。」

中山は努力と工夫により打力でセリーグを圧倒するパリーグで生き抜いた実績を非常に買っていた。

パリーグ各チームDH制を考慮にして世界中からは打撃優れた選手を集めた。しかも極端な場合は無名でも打撃だけが天才的に優れたバッターをスカウトしていた。今でも4番に定着したDHが6チーム中5チームもあるのだ。現在セリーグでパリーグに匹敵する強打者はジャイアンツのビッグだろう。しかしそのビッグクラスの強打者がパリーグには最低5人はいると言うことになる。カープ・スワローズ・ドラゴンズ・ジャーアンツ戦後は交流戦が始まる。その時にも中山は必ず勝利導く為の方策を打ち出すと期待もしていた。

特に平の頭の中には長距離ヒッターはいらないと言う考えもあった。ヒット若しくは2塁打を打てば良いと考えていたのだった。

ヒットは内野安打でもヒットになる。2塁打はヒット製のあたりが飛ぶ位置で2塁打になる。

同じ打球でもライン際で2塁打になるのだ。

中山は長距離ヒッターではなかった。いかにすれば安打になるのかをよく研究していたのだ。それは早期に各選手に教え込む事が可能だと判断していた。

第22話 ライジンボール

ベイスターズ第3戦

この日の先発は一文字 ベイスターズは南条でプレイボール。

タイガースは初回から1失点6回裏に5番堂山のホームランで1点返し、1-1になるものの7回表ノーアウト満塁の大ピンチ、茲で平は継投策にでた。

平「ピッチャー交代 神雷!」

「さあ、注目の投手神雷再びマウンドに上がりました。昨夜は大暴投1球でまさかまさかのトリプルプレーで交代、本領を見せぬままの悔しい降板になりましたが、さて本日はこのピンチどう切り抜けるか。」

剛「今日はわい実力を見せ付ける日やで。」

「バッターは3番のバッカーからですが、ノーアウト満塁でクリンナップですが、どうでしょう。神雷選手敢えてセットで投げません、振りかぶって第一球なげました。ストラーク!」

軍輝「なかなかいい球なげるね、135kmコース一杯。」

バッカー「ボーイの球あまり速くないね。・・・。」

「第二球投げました。打ったーーーーが、ファールです。」

軍輝「チョットコース甘ければいかれるね。130km代の球じゃね。」

「しかし、ツーナッシングとバッカー追い込まれています。」

「振りかぶって第二球投げました。空振り三振!。」

軍輝「なになに、ボールが奇妙に変化したよ。」

バッカー「オーマイガー!なんだい今の球。」

「三振したバッカー首をかしげています。」

「次は4番のキャリーです。今のバッカーの打席をじーーーと見ていました。」

キャリー「やつの最後の球、ホークかシンカーか・・・?」

剛「はーい、キャリーちゃんも三振しましょーか。」

「神雷キャリーに第1球、変化したがストライーーーク!」

キャリー「・・・・・・。」

「第二球、これも変化したが速いボールだストラーーーク。」

軍輝「ナックルだね、こりゃ、でもこんなナックル見た事ないね。変化しすぎちゃうの。まるで稲妻が落ちるみたいに横に揺れながらストーンって感じかな。」

「サンシーーーーン 見送り三振全く手が出ず。34番三球三振です。」

結局5番鈴田も三振でタイガースは7回のノーアウト満塁のピンチを切り抜けた。

8回表も三振こそ1人だが打たせて、僅か7球でチェンジ、タイガースは9回裏に高杉の内野安打で延長にもつれる事無くサヨナラ勝ちをおさめた。

対ベイスターズ戦3連勝 平タイガース好発進した。

ちなみにヒーローインタビューの御立台で神雷は・・・。

「神雷選手、7回ノーアウトの大ピンチで3者連続三振お見事でした。そこで投げたあの変化球一対何と言うボールなのでしょう。」

神雷「ライジンボール!」

それ以来世間は彼の投げるナックルをライジンボールと呼ぶようになった。

第21話 アルタでフィーバー

剛は平と別れて翌日新幹線に乗り東京新宿へと向かっていた。隣の座席には小学校からの悪友、兼田信吾が座っていた。儲け話があると兼田から聞かされその話に乗ったのだ。

新宿での儲け話などろくなものではないと本人もうすうす感じていたものの、向こう見ずな性格が「よし、おもろい!」の一言で引き受けてしまった。

下手をすれば犯罪に手を染めかねない運びやの仕事だった。高校中退で人生もお先が見えない状態だし、上手くいけば10万もの大金が懐に転がりこんでくる。

ぷータローしていても腹は満たされない、神雷の選択枝とすれば藁をも掴む思いに匹敵するものだった違いない。

新幹線の中であれこれ過去の記憶が蘇ってきた。自分の人生は一対なんだったのだろう。

予想もしない顛末に当初の腹だたしさから今では虚脱感に変わっていた。

「ライジンボール」平と二人三脚で編み出した魔球、それが陽の目をみぬまま終わってしまうかもしれない。

高校最初の紅白戦、快刀乱麻に甲子園組を三振に討ち取って行く。剛速球ならばマシンの調整で適応できるようにも可能だが、ナックルボールを投げるピッチングマシンは存在しない。そこが平の狙いだった。

しかし、天狗の神雷が素直に従える存在は平しかいなかった。おっちゃん以上の監督は存在しない。幼な心にそう刻み込まれていた。

しかし、浪速高校の兵藤監督が平の事をこういった。

兵藤「あの男は野良犬監督だともっぱらの噂だ。」

だといったのだ。

その言葉に神雷は切れてしまった。

退部と言うかたちの報復措置をとったのだった。

夕方6:30スタジオアルタ前に到着し、仕事の依頼人が来るのを待った。するとスタジオアルタの巨大モニターに平の顔が映し出された。

「タイガース新監督、平源さんの就任がきまりました。」

そう流れているのを目撃した剛。

剛「お、おいあれ、おっちゃんやんけ!」

モニターを指差し驚く剛。

「明日のベイスターズ戦から指揮を執る予定ですが、更に平監督の指名で何人かの選手の入団も決まっておりますが、現在 神雷 剛選手 16歳の入団が本人承諾で決定しております。また・・・・・。」

更には自分の事まで報道され仰天してしまった。

剛「おちゃん。や・やりよった。」

兼田「みなさん。神雷選手ここにいますよーーーー!」

通り行く人々の注目を浴び、タイガースファン中心に円陣が出来て、歌うわ踊るの大フィーバー。夜明けまではしゃいだ。勿論仕事は流れた。

夜明け帰りの新幹線に乗り一路大阪に、ベイスターズ第二戦から1軍ベンチ入りだと平から聞かされた。新幹線の中で泥土の如く寝入る始末だった。

第20話 川原の土手で

中学卒業までの3年間、平からは手紙やメールは届いた。滋賀県の私立高校叡智学園野球部の建直しに奔走している事が伝えられた。平は野球部の監督としては認められていなかったが剛の目標は決まっていた。それは「おっちゃんの監督の高校で甲子園を目指す。」と言う目標だった。

剛「俺が中学を卒業する頃には、おっちゃんも正規監督になってるやろ。」

しかし、平はせっかく苦労して叡智学園を甲子園に導いたのにもかかわらず。監督に就任できなかった。

それ以来平と音信不通になってしまった。剛は進路に迷い糸の凧の如くだった。中学野球部での活躍に大阪府内の名門高校からのオファーを受けて、なにげない気持ちで浪速学園にスポーツ特待生で入学した。

父親は外国人だったのか髪が生まれつき金髪だった為、外見による周囲に与える印象はよろしくなかった。それよりも礼儀を知らぬ自信に満ち溢れた剛の素行はすぐさま上級生の反感を買うものになった。

監督のこのじゃじゃ馬を何とか飼いならし、甲子園連続出場・全国制覇をはたさんと思った。

一度あの小童の鼻柱を折っておく必要があると、甲子園経験組みを相手の紅白戦をおこなった。勿論剛は甲子園経験組みの相手チームの投手だった。結果は甲子園経験組の惨敗だった。剛の速球とナックルボールに完全に翻弄されてしまったのだった。

それがますます剛を増長させ、上級生の反感をさらに買い、野球部を辞め同時に退学したのだった。まだ4月の半ばだった。剛は草野球に明け暮れる日々を送っていた。

4月も後残すところあと数日、草野球が終わり川原の土手で大の字になって寝ていた。

その自分の顔のぞきこむ見覚えのある男顔があった。

剛「お・おっちゃん!」

平「なんや、なんや一生懸命甲子園目指しとる思うたら、学校中退したってか。」

剛「お・おっちゃんそれよりどこにいっとたんや。心配したで。」

平「わしかて毎日お前の事が心配やった。でも心配通りやったけどな。」

剛「あんなチームくさっとるわ!」

平「お前まで腐ってどうするんや。」

剛「おっちゃん、今どこの高校の監督しとるんや?」

平「どこの高校でもない。」

剛「なんや、しょーもない。」

平「しょーもないか、ほならわしがタイガースの監督やったらどうする。」

剛「あははははは。冗談きついわ、そんなもんタイガースやろうとヤンキースやろうとおれは入団したいわ。」

平「よっしゃ!決まりや入団決定や、神雷君おめでとう。週明けから甲子園にこいや。それよりもわしは今からオーナーと打合せせなあかんよってに。神雷君たのんだよ。」

「あははははは。わかったよ、それよりおっちゃん居所おしえてや、絶対やで。」

この時剛は平の言う事を信じていなかった。ついに頭がおかしくなったか、誰かにそそのかされたか、からかわれたかのいずれかだろうと。


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