浴室 -9ページ目

笑顔

下らないことで笑うわたし

下らない言葉にさも嬉しそうに微笑むわたし

じっと見つめて少し首を傾げて、照れたようにはにかむわたし



笑顔を作ることは苦じゃない

その瞬間わたしは心から面白いとか嬉しいとか、恥ずかしいとか思っているから


スイッチだけが入れば、わたしは笑える


お客さまがわたしの笑顔に満足して下さるのならば、わたしは意味もなく笑う

それが仕事だから、笑う

交錯する

思い

わたしとあなたは、多分通常では交わらない位置にある点と点で、それが何らかの作用で交わる時に、化学反応が起きる

仕組まれた化学反応では、結果もおのずと見える

終焉への道のりを、やけに冷静に見ているわたしがいるのは間違いない


なぜかしら、勘かしら、なんとなく、匂いがするのよ


この人と早く終わりそうだなとか違うなとか


でも全て話し半分の世界だから傷つきもしないし、喜ぶこともあまりない


「気が合うね」

「一緒にいると楽だね」


なんてそんな素敵で馬鹿なこと言うけれど、わたしがあなたに合うように、合うようにしているからじゃないの

長年連れ添った夫婦でもないし、そんな自然にあなたの呼吸に合わせられるはずがないでしょう



‥‥いや、そんなあなたの言葉すら、わたしを喜ばせる為のおべんちゃらなのかもしれないけど



何れにせよ、全て話し半分なわたしは、いつもわたしの半分はそこにはいないということ

何をするにもどこか冷静なわたしがいるけど、でも今はそんな状況を楽しめるほど元気ではない

宙ぶらりんで、進める会話の先

あまりにも馬鹿馬鹿しい虚言も笑顔で受け入れてあげるわ

だって全ては半分だもの、狂った空間に存在している二人なんだもの

じっと

息を潜めて耐えろ

なるべく何も考えずに、耐えるんだ

厚い厚い面の皮を被って息を潜めて、腹の底にある感情を殺すんだ

誰にも悟られちゃいけない

誰にも見付かってはいけない

じっと、じっと