『英文解釈教室 改訂版』~英語講師にこそ価値のある英文解釈問題集~ | 大学受験 英語勉強法 〜灘高&京大卒 塾講師からの指南〜

大学受験 英語勉強法 〜灘高&京大卒 塾講師からの指南〜

中学受験に失敗…その後懸命に努力し高校受験で灘高に合格! 一時燃え尽き症候群で苦しむも再起し京大合格! 今ではその経験を活かし、塾・予備校講師として主に高校生・浪人生に英語を教える日々。そんな講師が具体的な大学受験の英語勉強法を提示する。

英文解釈のレベルはいくら上げても限界がないのではないか、と思えるほど奥深いものです。もちろん受験をクリアーするレベルや、英文を多読していくレベルでは必要とならないほどレベル・難易度の高いものも存在します。


そのようなレベルを受験参考書としても網羅している参考書として非常に有名な参考書を今回は紹介しようと思います。


それは『英文解釈教室 改訂版』(研究社)です。




この問題集自体は、少しでも難関大の受験に関わったことのある人であれば、誰もが知っていると言っても過言ではない参考書の1つだと思います。


もはや「改訂版」が出たのすら1997年というなかなかの歴史を持つもので、改訂前(1977年発行)のものを含めれば本当に『古典的名著』と言っていいレベルのものだと思います。



●特徴の把握●
確かにこの参考書は昔は非常に価値が高いものでした。扱っている英文の構造が非常に難しかったり、直訳では非常に訳しにくかったりと、英文読解をする上での難点を多数含んだ問題集になっていて、それをクリアーするための学力をつけるには非常に良い参考書となっています。


なお、内容的には文法テーマ別に構成されていて、『主語と動詞』『目的補語』『that節』『what節』『倒置形』『同格構文』『It … that …』『意味上の主語』『関係詞』『修飾語の位置(1)』『修飾語の位置(2)』『比較の一般問題』『比較の特殊問題』『『共通関係』『挿入の諸形式』という構成になっています。


しかし、現状の入試でここまでのレベルが必要かと言われると、決して必要だと断言はできないのです。


和訳が難しい大学の代表格である京都大学でさえ、このレベルの英文の構造面での難しさを含んだものはめったに出題されなくなりました。ましてや京都大学レベルの英文を出してこない大学に関しては言うまでもありません。


今の入試は、出題される英文の長さの平均値をとると500wordsを超える程度になっています(600wordsまではいきません)。大学によっては1500wordsを超えてくる大学もあります。


それに対して昔はここまでではなかったのです。実際、昔の長文問題集を見ると、300words程度の問題が載せられているものが多いのです。それくらい長文読解として出題される英文の長さが短かったということがわかります。


これはあくまで「時代の変化」というものであって、決してレベルが下がったとか上がったとかいうものではないと思います。


昔は『英文解釈・英文和訳の能力』を高く評価していて、今は『短時間での情報処理能力』を高く評価している、という違いがあるだけなのです。



●この参考書の本当の価値●
ではこの参考書は本当に無意味なのか。そう聞かれれば、それに対しても無意味とは言いにくいのです。しかし、確実に使用できる人のレベル・状況を問うてくる参考書だとは思います。


上に挙げたような京都大学を志望している生徒が、「高3・浪人時にその時点で十分に合格に足るだけの学力を持っていて、英語以外の他の教科に関しても問題なく、さらに英語力を鍛えていきたい」と思っているような状況であれば、是非この参考書に手を出してほしいと思います。


しかし、このような状況にない人であれば、「絶対に他にすべきことがあるはず」と言えることになります。


すなわち、まずは合格というのを1番手において考えていくのであれば、この参考書に手を出すのではなく、自分の抱えている弱点を強化するような参考書を手にとった方がよいと思うのです。


ただし上にも示したように、この問題集自体は非常に秀逸なものなのです。また、現状で高校生や浪人生を教えている教師の中には、この参考書で持って入試を乗り切った人も非常に多いと思います。なので、どうしても難関大を志望している生徒には「この参考書良いよ」と言ってしまう可能性があるのです。


しかし、そう言われた場合は受験生であれば、必ず立ち止まって考える必要があります。「本当に自分はこの参考書に手を出していいほどの学力を現状で持っているのか、他にすべきことは全くないのか」と


では、いかにもこの参考書が全く必要ないかのように思われるかもしれませんが、しっかり条件さえ満たせば優秀な参考書であることに変わりはありません。


例えば、僕のような大学受験を指導している塾・予備校講師にとっては非常に価値が高いものとなっています。


この『英文解釈教室 改訂版』はその時代の英文解釈に対する概念を大きく変えたほど、その当時には斬新な発想、秀逸な内容だったわけです。そのようなまさに『古典的名著』と呼べるものには、それだけの何かが必ず含まれています。


それは決して単に英文の難しさだけではなく、英文解釈をする上での文法の捉え方や訳し方の工夫など、受験指導を本格的にしようとする講師にとっては学ぶところは多数存在します。


これは経営者がその道の古典的名著を読んだり、高校で習う古典が今でも受け継がれ教えられているのと同じような理屈だと思います。


僕が思うには、『英文解釈教室 改訂版』レベルの英文がもうこれ以降出なかったとしても、このレベルの英文であっても明快に説明・解説できるレベルになることが講師としては必要だと思いますし、少なくともそのレベルにいる講師が多数いるのは事実だと思います。


すなわち、この参考書は『受験指導をする英語講師にこそ読んでほしい参考書』だと思います。