ヨコハマ学生演劇フェス2021、今日の公演の開演時間まで30分を切っているギリギリのところでブログを更新してしまい大変申し訳ありません。今からでも当日券の人の呼び込みにこのブログ役立たないかな…(泣)
【当日券あります!!!】
(ふぅ……ごめんなさい…)
今回は団体インタビュー第6弾!
トリは『犬猿も仲』さんです!!構成の都合上、初っ端の質問からかなり切り込んでしまっているのですが、どうぞ開演前の当日パンフレット代わりに、もしくは終演後の帰り道にでも、もしくは配信でご覧になった後に、このインタビュー記事をお読みいただけたら幸いです。
はっきり言ってめちゃめちゃ面白いことを聞き出せた気しかしません。
それではどうぞ!
事務局:佐々木「個人的な話ですが、『犬猿も仲』さんの作品を今までに何度か拝見したことがあります。失礼でしたら申し訳ないのですが、『この劇を観て沢山考えなければならないんですよ』『考えるべきだ』『考えた方が“偉い”んですよ』と私は感じたことがあって。
『犬猿も仲』という団体としては、お客さんのことをどれくらい考え、意識しているのでしょうか。それはお客さんに届けるということとは違うのでしょうか。」
主宰:新井さん「団体とお客さんの関係はlose-loseが目標です、Win-winではなく。
考えてもどうしようもないことって世の中にあるじゃないですか。
そういうことを考えてるのは時間の無駄だし、変に悩み事が増えちゃう。自分にとってマイナスです。
『犬猿も仲』ではそういう悩み事を取り上げてるから、気分も落ち込むし時間の無駄だと思います。『一緒に地獄にいこうぜ』を団体のキャッチコピーにしようとしたけれど、流石に止められました(笑)
でも考えることって根源的に娯楽性の高いものなんじゃないかな、と。
考えることをめんどくさがる人が多いけれど、考えることは娯楽だよなと思うんです。
得るものが何もなくっても、考えること自体が楽しいと思うからそういう作品をやっています。例えば『死んだらどうなるんだろう』だったら、『確かに、死んだらどうなるんだろう?』と一緒になって考えてみない?って。」
佐々木「考えるの、私も好きかもしれないです。私は演劇の稽古の時も日常生活でも『これはどういう気持ちになるんだろう』『何故こういう気持ちになるのだろう』『こうなるのはどうしてなのだろう』とはてなマークをよく抱えていて、『お前、理由を求めたがるよな~』とか『考えすぎだよ(笑)』と言われます…(笑)」
新井「演劇において、みんなで考える時が楽しいのにな~(笑)
俺たちの作品は、エンタメ性とかは考えていなくって。
『ここまででこのくらい理解してくれたらいいだろうな』とは思うんですが、感想を予想して作ってないんです。
ここでこういうシーンを入れたらお客さんは盛り上がるだろう、と思うから理由がなくてもそういう演出をつける演出家もいます。
それは俺はあんまりなくって、脳みその働きは意識していてもお客さんの反応や感想なんて、そんなこと考えてもわからないなって。
エンタメ作ってますは嘘だと思っているんです。どんな話でも面白がる人と面白がらない人がいますよね。
なるべく多くの人にウケるように、と目指すのもわかりますが、それは何も指針がないのと一緒ではないでしょうか。“なるべく多くの人”って誰のことだよって(笑)
例えば今インタビューしている佐々木さんのことは少し知っているから(※1)
(※1 横浜国立大学演劇サークル「劇団三日月座」の先輩(新井さん)後輩(佐々木)関係)
佐々木さんはこのシーンをこう思うだろうなという予想は出来るけれど、不特定多数の人が面白いなと思うのはどういうものか俺には全く分かりません。
自分では自分と自分の作ってる人の面白さしか分からないんだから、面白さっていうのは、みんな”俺が思う面白さ“を“俺が思う“を端折って”面白さ“と発言しているだけなんじゃないのかなと。最早“俺と同じ感性の人がそこそこいるよな”と傲慢で盲目的になっているようにも思います。
だから、そのふわっとした何かに向かって作品を作るなんて、修行僧のようだなと思ってしまいます。ただでさえ正解がない演劇の中でさらに正解のないものを目指すわけで。
逆に俺たち『犬猿も仲』は、『あの人に面白いと持ってもらえたら勝ちだね』という感じで作品を作ることがあります。
1人に絞るとリアクションがだんだん見えてくるんですよね。」
佐々木「先日自分が役者で出た公演で、お客様から『凄かった!』『面白かった!』と感想を沢山いただいて。勿論とっても嬉しかったのですが、ではこのお客さんが思った『凄い』『面白い』とは一体なんだったのでしょうか。」
新井「役者や舞台、照明など関わっている公演に関わっている人間が頑張っているからすごい、というのもあると思うけれど、見たことないものに対して拒絶するか許容するかということだと思います。
面白いものというのは見たことないものになっていっているんじゃないかな、と。
見たことないものが面白いという定型文が出来上がりつつあるのではないでしょうか。
でも、目新しさを演劇に盛り込んじゃうと目新しさしか目がいかなくなってしまいます。俺はそこだけで評価されても面白くないと思いますね。
『私今までこういうの見てこなかったんです』という経験の発表をされても、という感じ。
舞台上の役者ではなくて、作演した自分新井収のことを考えてしまう作品にはしたくないです。新しいことが出て来ると作り手を想像しちゃうんじゃないかなと思っているので。
お客さんは『犬猿も仲が新しいことやってる!』と思った時点で、自分新井収や『犬猿も仲』など、作品内容ではないことを考えてしまうのではないですかね。
俺は、目新しさではなく意図がちゃんとお客様に伝わることが重要だと思っています。『自分たちが何がみせたいか』ですね。」
佐々木「以前のブログで書かれていたのはそういうことだったのですね…!」
(以下10/24のブログ)
脚本は既に書き終わり、稽古も数回やってみました。でも、どんな劇になるかはまだ分かっていません。本だけで完成しないのが、演劇の面白いところですね。
予想としては相変わらずなことをやっていると思います。
もちろん自分たちの中では様々な新しいことがあるのですが、皆さんには「相変わらずだなぁ」と思ってもらえれば十分だと思っています。
是非
相変わらずな「犬猿も仲」を見に来てください。
佐々木「今までは短編作品を作ることが多かったとのことですが、今回は何故短編ではないのでしょうか。そして、逆に今まではどうして短編だったのですか?」
新井「『コンテンツが消費されていくよね』と言う話が僕らの間であって。近年いろんなものが気軽に消費されていく流れがあるように思うんです。
そうではなく繰り返し使いたいな、って。
だったら短編作品を手持ちでいくつも持っていれば、脚本自体を消費しないんじゃないかなと考えたんです。それこそ今回役者を務める北澤優香の所属する劇団『チリアクターズ』のような(※2)。一回限りのものではなく、再現性のあるものにしたかった。」
(※2 『チリアクターズ』のシンボル的短編作品に『しらずのうちに』がある。
再演もされ、作品が一回性ではなく長期的に、キャストも入れ替えて楽しめるものとなっている)
佐々木「『犬猿も仲』さんが同じ脚本でキャストを変えて来年1~2月にアポックひとり芝居フェスティバル『APOFES 2022』に出場されるのも、そういう思いと関係があるのですかね。
あれ、けどこれまでの公演で同じ脚本の再演は見たことがないような…」
新井「そうです。俺たちの団体は公演のスパンが頻繁ではないから、まだ再演できたことがないですね。いっぱい作品が溜まったら、その中からこの作品を再演…ってできるんですがね。
手持ちの作品が多くないからできていないだけで、今後はやっていきたいなと思っています。」
佐々木「あと、新井さんのブログを読んでいると、新井さんは演劇が好きなのか嫌いなのかよくわからなくって…」
(以下11/6のブログ)
自分にとって、横浜駅はお酒と演劇を教えてくれた場所です。どちらも思うように味わえなかった分、このフェスで乾きを潤していきたいなと思っております。
(以下11/13のブログ)
ただ自分の中で大きくあるのは、「知らない人と演劇を作るほど演劇が好きじゃない」という事です。
演劇は人間関係がそのまま出ます。そう考えると、顔合わせで初めましての人達と劇を作っていくのはとても難しく、大変な作業です。だからこそという方もいるかもしれませんが、特に自分は人見知りということもあり、関係を築いていくのに苦労した経験がいくつもあります。
また、自分は演劇で食べている訳ではありません。
なので、誰とでも演劇を作ることより、誰かと面白い演劇を作っていくことを選びたいと思っています。
(以下同じく11/13のブログ)
一応、生まれた時から演劇がない世界だったらということで。最有力は武道です。小学校1年生の頃から、大学受験が本格かするまでの10年間合気道を習っていました。高校では演劇部と少林寺拳法部を兼部していました。個人的には大学でも続けていようと思ったのですが、演劇にどっぷりハマってしまったため、諦めました。
新井「俺の今持っているものの中では演劇が1番好きなんだと思うけれど、それは俺がモノを好きになる時の没頭度が単純に低い人間なんだなと思っています。
学生が終わっても、今後も演劇で食べていくつもりはありません。
 “演劇を作ること”自体にはこだわりがなくて。“誰とでも演劇を作ること”になって人間関係の構築やらを我慢してまで演劇で食っていこうと思わないんです。
演劇が出来てたら他に何もいらないという状態の人もいると思いますが、俺は“誰かと面白い演劇を作っていく“、こういう条件で演劇していたいと思いますね。」
佐々木「『犬猿も仲』という団体名の『仲』だったり、今回の作品タイトル『洞の文通』の『文通(=手紙の“やり取り”)』といったように、『犬猿も仲』さんの作品には人間の関係性や人間に静かに焦点を当てた、目を向けたものが多いように感じます。人間、お好きですか…?(笑)」
新井「人間は…好きかどうかで言うと好きではないと思いますね(笑)
初めて脚本と演出どちらもやったときに、観に来てくれた年下の後輩に『若いっすね』と言われたんです。
俺らの劇って多分幼くて。
他人と関係を作るということに距離を取って脚本を書いています。
俺は他人とちゃんと向き合えないんですよ。自分としか向き合えない。
俺は俺のことが好きなんだと思います(笑)
佐々木さんは俺が視線を向けているのが他人だと思ったけれど、俺は俺を見ているんでしょうね。
人間関係について、俺は作品中で書いたことはありません。
登場人物に、恋人・友達関係はないですね。脚本上書かれていない。
脚本において、関係性という情報がいらないなと思っているからですね。」
ではでは!恒例の、『普段ブログを書いている人(=主宰・新井収さん)ってどんな人?』のコーナーです。
今回役者を務める北澤優香さんからメッセージをお預かりしたので、原文ママでいきます!
役者・北澤「うちの主宰でもあり、作・演出を担当する新井収は、『考える人』ですね。だからこそ、犬猿も仲のテーマは『考えるを娯楽に』だったりします。普段歩いているときは、脳内で3人かそれ以上ぐらいでずっと何かについて討論してるらしいです。頭も大きくなって、他人のヘルメットが入らないんですけど、あれも多分考えすぎで脳が大きいです。たぶん。あと頭の使いすぎでよく寝ます。相手のこととかもよく考えすぎて、気を遣いすぎる所もあります。でも、彼ほど『考える』ことに時間を割いてる人をわたしは他に知らないので、それだけ信頼しています。それから、『考える』ことが出来るからこそ、彼自身の『考え・答え』みたいなのがすごくしっかりあると思います。しかもそれが様々な領域にわたって(人間観や哲学的なことから、エンタメ、自分自身に関することまで)あって、その中で自分が何を面白いと思ってるか、そこもまた考えて、きちんと分析ができている人だと思います。
どんなものでも、例えば、大学の卒業論文とか、小説とか、ブログとかでも、『その人だけの考え』を生み出すっていうのは、実はすごく難しいことだと思います。結局誰かの考えを支持するだけになってしまったり、誰かの模倣になってしまったり。だけど彼はいろんな意見や分析、思考を経た上で、彼なりの考えを必ず提示してくれる。考えることが癖になっているような人なので。新井収とはそういう人です。」
団体インタビュー、以上で全て終了となります。更新遅くなり大変申し訳ありませんでした。
各団体さんから聞いたお話を、ワクワクするお話、考えさせられるお話を、なるべく読者の皆様に精一杯まるごとお伝えしたつもりです。ヨコハマ学生演劇フェス2021は勿論、今後も各団体のことを気にかけてもらえたら幸いです。
それでは!ブログ担当などの事務局・佐々木でした。明日はフェス最終日!!