佐々木邦。恋愛心理学 昭和25年のユーモア | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

映画 新しき土 16歳の原節子

 

田中比左良装釘の佐々木邦『恋愛心理学(1956)東方社』は以前に紹介した。戦後の二つの中編『新家庭異聞(1949)面白倶楽部』『恋愛心理学(1949-50」モダンロマンス』と短編3編が収録されている。

 

佐々木邦の作品は総じて中上流のおっとりとした登場人物による(特に昭和に入って以降は)予定調和的なものがほとんどで、どれを読んでも同じに思える。漱石『坊ちゃん』以降のユーモア小説を牽引した作家だが、昭和の佐々木は〝大人の風〟というかユーモア系ジャンルの大看板というかアンコン化している。

 

佐々木邦:恋愛心理学(1956)東方社

 

 

田中比左良 装釘

 

ただ、本作品『恋愛心理学』では、女性心理を解していると思われた(心理学を教える)若き大学教授は選り好みした挙句、紹介される美女を次々と逃してしまうお噺。『新家庭異聞』は、師の美しき姪をめとったところ、画塾の仲間のシットから幽霊騒動に巻き込まれる新婚カップルの騒動を描き、いつもとは若干内容を異にする。

 

週末は夜間も暑ぐるしく重だるい本は読む気が起きない。積ん読本の中からジャケ買いした軽小説の消化に努めることに。イラストは映画『新しき土(1937)』に出演した16歳の原節子を。当時のティーンの大人びていることといったら。