浜尾四郎随筆集。弁護士にして探偵小説家 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

ダイアン・クルーガー

 

本探しのために積ン読本を取り崩していたら『浜尾四郎随筆集(1936)春秋社』がでてきて「そういえば函背が抜けていたんだ」ということで補修をすることに。ボール紙に題箋を造って貼りつけ水彩絵の具で古色をつける。

 

浜尾四郎は検事から弁護士へ。貴族院議員にして子爵。かつ趣味人でその数ある趣味のひとつが「探偵小説を書く」だった。弁護士で探偵作家といえばE・S・ガードナーだが、浜尾は本格推理を目指したようだ。

 

浜尾四郎随筆集(1936)春秋社

 

本書は昭和11年の刊行だが浜尾は前年に39歳で急逝する。所蔵している雑誌『オールクヰン創刊号(1934.11)クヰン社』に浜尾四郎『平家殺人事件(梁川剛一挿絵)』が掲載されていて、この連載中に急死(1935.10.29)したため絶筆となった。

 

 

というわけで『随筆集』は友人たちが、雑誌『新青年』などに掲載された(ミステリではなく)随筆類をまとめた追悼本ということになる。巻頭に、江戸川乱歩、甲賀三郎、大下宇陀兒うだるらが悼辞を述べている。

 

随筆自体は「落語と犯罪」「歌舞伎劇に現れたる悪人の研究」あるいは「犯罪者としてのマクベス及びマクベス夫人」といった堅い内容で、趣味で培った見識の延長といった感じ(作者の性格なのだろうか、やや衒学的?)で生真面目な印象だ。いい機会なので浜尾の代表作『殺人鬼』の借出予約を図書館に入れた。