角田喜久雄:寝みだれ夜叉 田代光 挿絵原画 部分
角田喜久雄全集11巻『寝みだれ夜叉(1971)講談社』に使用された田代光による挿絵原画を掲載します。以前にも紹介したことがあるのですが、久しぶりに再読したのを機に虫干しです。
寝みだれ夜叉 田代光 挿絵原画
田代光(素魁/1913-1996)は中堅の挿絵画家。藤田嗣治に褒められたというデッサンの巧者で、どちらかというとリアル系の挿絵が多いのですが、徐々に自在度を増してきてさまざまなタッチの挿絵を残しています。
角田喜久雄全集11巻:寝みだれ夜叉 口絵全3葉
『寝みだれ夜叉』の舞台は江戸時代中期8代将軍吉宗の時代。北町奉行大岡越前守の腹心・同心水木半九郎シリーズで、大岡忠相へ仕掛けられた周到な罠から脱すべく奔走する半九郎の活躍が描かれます。吉宗の元愛妾とその背後で煽動する謎の男、紀州藩家老配下の忍群、忠相と反目する鬼目付の執拗な追及など三つ巴、四つ巴の抗争が続く。
角田喜久雄といえば、戦前の「伝奇小説」を確立した作家で、スピーディな展開と巧みな人物造形に定評があります。本作も傑作の部類なのですが、本文2段組400ページは長すぎる。しかも初中盤に紙幅を使いすぎたのか、終盤は事態の経過を語るばかりになってしまっている。ちょっと残念。
角田喜久雄全集11巻:寝みだれ夜叉(1971)講談社
日本伝奇大ロマンシリーズ第1巻(1970)立風書房(右
『寝みだれ夜叉』については(昭和30年代の雑誌連載だと思うのだが)初出紙がわからない。ネット検索でも定かならず、春陽文庫版の解説にでも記載されてますかね? 気になるところです。
【追伸】読者の方からコメントをいただき、初出は高知新聞他の地方紙連合、S37.06~S38.05の一年間の掲載だったようです。初出単行本のロマンブックス版が昭和39年の出版でしたので時期も合うようです。ご連絡ありがとうございました。
時代小説の女たち