S.ジェンティル。ボストン図書館の推理作家 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 

サラーリ・ジェンティル『ボストン図書館の推理作家(2022)早川ミステリ文庫』の構成が変わっている。

 

オーストラリアのミステリ作家ハンナは、ボストン公共図書館内で起きる殺人事件を扱った新作を書き進めているが、パンデミックがあって海外への取材が難しいところから、ボストン在住の作家志望者レオに執筆中の原稿をメールで送り不都合な点、気になるところなどを指摘してもらうことにした。

 

本著はハンナによる執筆中の作中作(虚構)に、折々レオの返信メール(現実)が挟まれる構成。ところが、徐々にレオの文章は不穏さを増してきて、虚構と現実が互いに干渉し混然としてくると両者は次第に不分明になっていく。

 

S.ジェンティル:ボストン図書館の推理作家

 

さて、そのハンナによる新作とは、ボストン図書館内で突然女性の悲鳴が発せられ、その時の捜索ではみつからなかった女性が数時間後に遺体で発見される。悲鳴が聞こえた近くのテーブルにいた4人の男女が任意の事情聴取を受けるが、その頃から彼らの周囲に様々な事件が起き始め。といったスリラー&ミステリな展開になっている。

 

2組の男女のロマンスも描かれていて、私のような枯木老人向きとはいえないかも。話のテンポがあがるのが中盤からで、それまではやや冗漫な感じがしなくもないが中終盤は読ませてくれる。書物ミステリかと思ったのだが違いましたね。