小島政二郎。下谷生れ:田代光 装釘挿画 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

小島政二郎

 

小島政二郎『下谷生れ(1970)上野のれん会』は、限定560部の豪華版。下谷生れの小島が自身の思い出をタウン誌「うえの」に気の向くまま書いたもの。本当にプライベートな内容で、子どものころに唄ったわらべ歌や、家族のこと、出逢った人など、気随気ままに語っている。昔からの地元民はそーだったそーだったと懐かしんだろうそんな感じの本。

 

この本の装釘と口絵を担当したのが田代光で、もともと依頼された挿絵は4点だったが、友人小島のために8葉描いた。外函と見開きは木版刷で、彫秀こと北島秀松が丹精した。

 

小島政二郎:下谷生れ(1970)上野のれん会

 

田代光 特色3色刷口絵

 

  

 

 

田代光は奇を衒うことなく造本に関わり心尽くしが感じられる仕上がりだ。小島政二郎は本来豪華本を好まず、なるべく安価で多くの人に読んでもらえるのが本望。鴎外先生も豪華版と普及版があれば必ず安価な普及本を買っておられたなどと奥書に書いている。でも「ありがたくも嬉しい」と感謝を述べている。

 

 

外函と袋状(左側)の凝った見返し  奥付

 

田代光は前回ブログでも触れた。そういえば、売出中の松本清張とコンビを組んでいい仕事を残している。手元に切抜きがあるはずなのでいずれ機会があったら紹介したい。