菊池幽芳:彼女の運命(1923-24)大阪毎日新聞
菊池幽芳の新聞小説『彼女の運命』の切抜きを再製本した。挿絵は絶頂期の鰭崎英朋が担当していて、この挿絵については以前にも紹介している。幽芳の回想によると異常なまでの好評で、すぐに4社が競作し映画化され1932年に再映画化された。すべてサイレント映画とのことである。
菊池幽芳:彼女の運命 新聞切抜き
鰭崎英朋の挿絵
明治中頃から流行りだした「家庭小説」に位置づけられるもので、昭和の「昼メロ」「よろめきドラマ」はその後裔といってよく、菊池幽芳はそのジャンルのスター作家でした。そして、その幽芳とコンビを組んだのが鰭崎英朋で、大正初期あたりまでは鏑木清方も幽芳の挿絵を描いている。
英朋と清方は日本画の結社「烏合会」の良きライバルでしたが、挿絵の仕事は多忙で清方は体を壊したこともあり、挿絵から本絵の世界へ転身する。一方、英朋は扶養家族が多く身動きがとれず挿絵の世界にとどまったことで忘れられていった。近年の再評価はめざましく嬉しく思う。
鰭崎英朋の挿絵
再評価のきっかけになったのは、弥生美術館による展覧会と、展覧会に合わせて松本品子編集『妖艶粋美:蘇る天才絵師・鰭崎英朋の世界』が出版されたこと。英朋の挿絵についてはわりあい早い時期から蒐集していたので、半端なコレクションも含めて自慢している。まぁ誰も感心してくれませんが(笑