松本品子編「蘇る天才絵師・鰭崎英朋の世界」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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国書刊行会、松本品子編集による「妖艶粋美:蘇る天才絵師・鰭崎英朋の世界」です。弥生美術館での展覧会に合わせて出版されました。近年の英朋人気は度々取り上げましたので繰り返しません。発掘されると、たいがい「天才絵師」と奉られるのはいかがなものかなと思いますが、より多くの人たちに知ってもらいたいとの願いがこもっているのかもしれません。

英朋描く「牡丹灯籠」お露の幽霊が有名で、谷中・全生庵の「円朝コレクション」に加えられています。8月一月だけ一般に公開されるそうで、こちらも一回拝見したいと思っています。三遊亭円朝による幽霊画の蒐集は有名で50幅ほどのコレクションが展示されます。ただ、この英朋の作品は円朝の7回忌にあわせて描かれました。見てみたいですね。

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   鏑木清方(左)と英朋が競作

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艶麗な英朋と清楚な画風の鏑木清方の特長がよく分かります。下の拡大写真を見ていただくと、英朋の瞳に光がさしています。少女漫画のようにね。この瞳の光は英朋の特長のひとつで、鈴木春信のような細い瞳では描ききれなかった光を宿しています。ちょっと間違うと、ペタペタして格調を喪ってしまうのですが、英朋は水際で踏みとどまっていますね。この本には挿絵掲載雑誌のリストや略歴もまとめられ、英朋ファンには素晴らしい贈り物になりました。お奨めです。