池田彌三郎。はだか風土記:まじらまじらと待つ夜は | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

池田彌三郎

 

池田彌三郎(1914 - 82)は国文学、民俗学、随筆家。「慶應義塾大学文学部教授時代の1957年から1963年にかけて、NHKのクイズバラエティ番組〝私だけが知っている〟などに出演し、タレント教授の走りとしても知られたwiki 」とある。

 

この池田彌三郎の随筆『はだか風土記(1957)大日本雄弁会講談社』が愛読書のひとつ。こうした民俗学系の随筆はいま読んでも充分おもしろく捨て置くには惜しい。本著は性についての記述が多く、見出しからは興味本位に受け取られそうだが、内容は民俗学の範疇にとどまっていて、このあたりが芸風かな?

 

池田彌三郎:はだか風土記(1957)大日本雄弁会講談社

 

たとえば「江戸小唄」から

 

 まじらまじらと待つ夜は長うて、思い出してはじれ酒に、

 逢うて、恨みを、明けの鐘。

 

現代(昭和30年頃の)歌謡曲「ひばりのマドロスさん」から

 

 白い夜霧の流れる波止場。恋のテープが心にからむ。

 さよならも言わない先に、思い切れとか、鐘が鳴る。

 

などを引いて、江戸の鐘つきの〝株(権利)〟を持っていると、鐘の音が届く範囲の住人から鳥目(銭)を集めることができたためおおいに妬まれ恨まれた。そんなことから「恨み→鐘」といった発想につながったのではないか。などとある。池田彌三郎はおもしろい。