暇をいいことに、加藤武雄が大阪毎日新聞に連載(1928.6.22—1929.03.23)した新聞小説『饗宴』の切抜きを製本した。加藤武雄(1888-1956)は戦前戦後に活躍した通俗小説の作家で当時は菊池寛と人気を分けた。女性誌への掲載が多く若い女性をヒロインにしたものが多い。
明治20年代に登場した「家庭小説」の後継者なのだろう。ネットに木村涼子さんによる『大衆文学とジェンダー研究のために』と題された加藤武雄の作品目録が掲載されている。力量があった作家だが、今となっては研究対象にされても読まれることのない作家になってしまった。
手製ラベル
加藤武雄:饗宴 大阪毎日新聞連載
昭和2年から3年にかけて半年間(全180)の連載。挿絵を担当したのは33歳の林唯一で以降の活躍は戦後にはいっても続く。林唯一については資料も溜まってきているのでいずれきちんと紹介したい。
こうした新聞小説の隆盛は大衆(通俗)小説と、その作品に附された挿絵によるところが大きかった。ただ、惜しむらくは挿絵の地位が低くみられていたことから、連載後出版にあたって挿絵は割愛された。挿絵はマスメディアの勃興期にあって、その時代の「証人」ともいえるものだった。
加藤武雄:饗宴 新聞小説の切抜き