山本夏彦。死ぬの大好き | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 

読書しても読んだはしから忘れてしまう質で、甲斐のない習慣だと思っている。M.C.スミス『ゴーリキー・パーク』などは、3〜4回は読み返し映画も見ているのに、先日再読したところ新鮮な気持ちで読み終えた。

 

数年前に、山本夏彦の本がずいぶん溜まってしまい、夏彦翁の著作はどれも似たり寄ったりのところがあり「もう、いいか」と古書店に流したが、その後また少しずつ買い集め始めている。翁の作品は中毒症状をもたらすようだ。

 

山本夏彦:死ぬの大好き(1998)新潮社

 「社交界」たいがい(1999)文藝春秋

 

夏彦翁は少年の頃から世は生きるに値しない、死にたいと二度ほど試みたが仕損じた。以後、死生の傍観者になった。筋金入りのニヒリストで人生のアウトローを自認していたが、彼のコラムには読後粛然とさせるものがある。

 

なにげに夏彦翁の影響を感じることがある。自分の人生、生活を小さく縮めて諒とする。豪勢な旅行も美食もさほど興味がない。冬の衣料はセーター3枚、ジーンズ3本で足りる。近くに図書館があって、さらに古書店があれば環境に不足がない。などと、夏彦翁のコラムは、読後、中毒症状を発するのであります。