岡本綺堂。戯曲ふたば集 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

映画 蜩ノ記(2014)

 

岡本綺堂主宰による「漱ふたば會」による『戯曲ふたば集』の第2集、第4集を入手した。巻頭に兄弟子格の額田六福、巻末に岡本綺堂、中間に綺堂最初の弟子大村嘉代子をはさむ。同人の異色といえば、後にユーモア作家となる中野実の名前がみえる。

 

ふたば会は綺堂門下生の集まりで大正6年9月に誕生、毎月1回、夕6時くらいから9時過ぎ頃まで岡本綺堂宅(麹町区元園町)で会合し、劇談、レコード鑑賞、同人の戯曲の添削などをした。その成果物を集めて編んだのがこの『戯曲ふたば集』です。

 

戯曲 ふたば集 第2集(1921)聚英閣 左側

戯曲 ふたば集 第4集(1923)聚英閣   

 

当時、戯曲は文芸の花形として人気があった。戯曲というと堅いイメージだが、今でいうドラマのシナリオで、テレビなどがあるわけでなし、毎度劇場に通うわけにはいけない庶民にとって、こうした戯曲集はいわば代用文芸、軽便な娯楽だったのではないだろうか。

 

綺堂は、第2&4集とも時代ものを載せていて、南洋探検に乗りだし小笠原諸島を発見した小笠原貞頼(第2集)と、大坂の陣で東西に分かれた真田昌幸、幸村が帰城の折立寄った沼田城で、信之の妻小松(戯曲ではお仙)によって入城を拒まれたシーンを扱う(第4集)。ほぼ、池波正太郎の『真田太平記』と同じ描かれ方をしていて興味ふかい。

 

第2集の装釘は『半七捕物帳』などで縁が深い清水三重三。軽装版の第4集は表紙の傷みがあったため自装カバーをほどこした。イラストは意味もなく、映画『蜩ノ記(2014)』から。