M.C.スミス:アルカージ・レンコ・シリーズ
前ブログからの続き。マーティン・クルーズ・スミス『ゴーリキー・パーク(1981)ハヤカワ文庫』はモスクワ警察の殺人担当主任捜査官アルカージ・レンコ・シリーズの初巻で、翻訳した中野圭二によると「亡命ロシア人作家ではないか」と思ったほど、克明にロシア社会を描きだしているとのこと。M.C.スミスは米国人で、ロシアでは二週間の取材を行なったとある。
さて、モスクワの中心地ゴーリキー・パークで男女三人の身元不明の他殺体が発見される。社会主義国家にあって「あってはならない事件」を担当するレンコは、徐々に米ソ共同事業の闇に呑みこまれ、また、事件の要と目される美しいイリーナ・アサノヴァに惹かれ、いよいよ難しい事態に追い込まれていく。
下巻では、ロシアKGBと米FBIの生贄状態のなか、ニューヨークに派遣されたレンコは、全体主義と資本主義の狭間で、おのおの両主義の腐臭に満ちた実態を知ることになる。
本作品は英国推理小説作家協会ゴールド・ダガー賞受賞作品で、ウィリアム・ハート主演で映画化(1983)されている。アルカージ・レンコ・シリーズは全10作発表されたが、邦訳は4作のみ。先ほど第3巻『レッド・スクエア(1992)福武書店』が届いたところ。夜が楽しみ。
長岡市中央図書館