鹿島孝二。理想の新婚/柴田早苗。娘の世界 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

映画「ひめゆりの塔(1953)」の香川京子

 

鹿島孝二『理想の新婚(1943)大都書房』は戦前の良き結婚譚をつづったライトノベルで、右傾化した漱石「坊ちゃん」のような一徹な若者が、銃後を守るひかえめな娘さんと(工員風情にに娘はやらんという頑固親父を説き伏せ)ゴールインするというどーということもない内容の短編集です。

 

昭和18年にこうした作品が10,000部も再版されたのをみると、結婚どころではなかった時代のファンタジーだったのかもしれません。もっとも、戦後は多くの若い兵士が亡くなったため婿不足になり、鹿島孝二は再び同様の結婚物語を大量生産して社会に提供しています。装釘は高橋忠弥。

 

鹿島孝二:理想の新婚(1943)大都書房

柴田早苗:娘の世界 (1949)矢貴書店

 

柴田早苗は昭和23年NHKラジオ「二十の扉」のレギュラー解答者に起用され人気に。映画などに出演後、昭和30年結婚により芸能界を引退された。『娘の世界』は若い女性のどーということのない随筆短文ながら、巻頭には「二十の扉」レギュラーの久米正雄、吉屋信子、阿部静枝、宮田重雄が序文を寄せている。

 

『娘の世界』装釘は(よく獅子文六の挿絵を担当した)宮田重雄が買ってでられた。表紙絵は柴田早苗さんなのでしょう。マティスみたいで素敵です。表紙が外れたりした傷み本ながら、一冊300円ほどだったのでつい買ってしまい。仕事の合間に欠損した背表紙をつけたし表紙を貼り合わせ、補修もまた愉し。