西鶴の置土産。孑孑(ぼうふら)売り | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

井原西鶴がなくなった同年出版の遺稿集『置土産(1693)』の中の「人には棒振り虫同然に思われ」は、お大尽の成れの果てがボウフラ売りという落ちの短編なのだが、江戸時代前期元禄時代には、孑孑(ぼうふら)売りなどという職業があったらしい。金魚の餌を量り売りする。

 

原作では凄惨なこのエピソードを朝井まかては、西鶴取巻きの貧乏人の口を借りて「孑孑売りから初めて今では蚊帳を扱う」などと粋な計らいをみせる。太宰治は『新釈諸国噺』でこのぼうふら噺を新釈しているから、案外知られているのかもしれないが、なんとも言えない商売ではある。

 

西鶴は好色『一代男』噺をスタートに、ついには『永代蔵』『胸算用』など庶民町人の暮らしぶりを活写、浮世草子の新ジャンルを次々と開拓していく。

 

佐藤亜紀:喜べ、幸いなる魂よ(2022)KADOKAWA

 

昼休みに書店をひやかしたところ佐藤亜紀の新刊をみつけた。落ち着いた手触りのいい装釘で、こちらも気に入った。その佐藤亜紀さんは当地の出身だと知ったのは近年で、亜紀さんのご近所だったという知人に勧められて、一読。すっかりファンになってしまいましたね。