朝井まかて。阿蘭陀西鶴 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

朝井まかて『阿蘭陀西鶴(2014)講談社』は談林派の俳諧師から作家に転進、浮世草紙のジャンルを創りあげた井原西鶴の半生を西鶴の盲目の娘おあいの目線で描いている。初編『好色一代男(1682)』の主人公の世之介は「七つの歳から六十まで、戯れたおなごは3742人、若衆は725人」という豪の者。

 

モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ(1787)』が、これまでものにした女性は「イタリアでは640人、ドイツじゃ231人、フランスで100人、トルコで91人。そして、このスペインでは……1003人!(カタログの歌)」と歌う100年も前に、日本のドンファンは誕生している。

 

朝井まかて:阿蘭陀西鶴(2014)講談社

 

朝井まかてはその400年以上も前の異才を軽やかに現代に再現してみせた。西鶴の人物造形は手堅く、何より西鶴の娘おあいの造形が素晴らしい。休日に一気読みしてしまった。後にこの西鶴は忘れられてしまうが明治時代に淡島寒月が発掘蒐集し、その資料を元に再評価されるようになった。

 

寒月『梵雲庵雑話』(だったか?)に、西鶴本は「当初1円くらいの端値で蒐め始めたが、大正末には1000円くらいになった」などと書いている。書架で眠ったままの暉峻康隆の現代語訳(大商人への道を説いた)『日本永代蔵(1992)小学館ライブラリー』でも読んでみようか。

 

見附市今町 小林楼