レイン・ドッグズ。ショーン・ダフィ・シリーズ第5作 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

エイドリアン・マッキンティによるショーン・ダフィ・シリーズ最新刊第5作『レイン・ドッグズ(2021)早川書房』。1980年代の北アイルランド・ベルファストはイギリスからの独立を目指す反体制派、プロテスタントとカソリックによる宗教闘争など、複雑に絡まったセクトの対立にあって治安は混乱を極めている。

 

王立アルスター警察隊警部ショーン・ダフィのルーティーンは、乗車前に車底に爆弾が仕掛けられていないか点検すること。テロが日常の当地は警察官の死亡率が世界的に最も高いといわれた時代が舞台である。事件は古城の中庭で転落死した女性、当初は事故死と思われたが後に殺害(密室殺人の)可能性が。

 

E・マッキンティ:レイン・ドッグズ(2021)早川書房

 

主人公のショーンは当地ベルファスト、しかも警察内においても珍しいといわれるカソリック、ただ死を身近に感じる本人は虚無に囚われ無宗教的ではあるのだが異端視される。そんなことから第一部(第1〜3作)では孤立していた感があったが、第二部では部下との関係も良好で当初の暗さが払拭されている。

 

個人的には第一部にあったような、深作欣二監督のザラザラとしたフィルム、揺れ動くカメラアングルといった鬱屈を秘めた描写が好みなのだが、本作では楽しそうに10歳ほども年下の恋人と同棲していたりで随分印象が変わった。ともあれ主人公の行く末を案じながら続編を楽しみに第二部最終巻を待ちたい。

 

朝撮り写真から