野崎六助。安吾探偵控:イノチガケ | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

昨ブログのマッキンティ『レイン・ドッグ』ではないですが、戦時中の、日々多くの死者がでるなかで殺人(事件の捜査)にどれほどの意味があるのか? 国家同士が殺しあいをしている時に、平時の不文律である「人を殺してはいけない」は成立しない。そこで野崎六助の安吾探偵控・三部作第2巻『イノチガケ』です。

 

昭和20年冬、坂口安吾は下宿屋の二階でミステリマニアを集めて、軍によって集会を禁止されているのにもかかわらず「探偵倶楽部」での雑話で無聊を慰めていたが、日本軍の高射砲の破片が跳弾して知人が亡くなったのを契機に、メンバーが次々と不審死する。密室殺人であったり、事故死のような他殺(他殺のような事故死かも)といった。

 

野崎六助:安吾探偵控 イノチガケ(2005)東京創元社

 

折しも東京大空襲の2月25日は、死者195人、負傷者432人、罹災者76,285人という最中の殺人事件である。探偵倶楽部のメンバーと坂口安吾は、メンバー内に犯人がいると思われるなか、疑心暗鬼の捜査が始まる。石川光陽『東京大空襲の全記録』などを資料に、波状的な被災状況が描かれる。

 

空襲の最中に安吾に赤紙(実際は白紙による出頭命令)が届いたが、焼夷弾で「焼けたことにしてすっとぼける」といった有名なエピソードなども加えられていて笑わせる。アガサ・クリスティの(ネタバレするので書名は伏せますが)某有名作品のプロットが使われていて、ちょっと残念。

 

図書館脇のモミジの木

 

 

今冬初めてといっていい雪国らしい降雪で、美しくも往生いたしました。右下は庭木の雪囲いです。丹念に設えられた冬囲いは着雪もまた美しい。まさに「(汚れし)わが心にも雪ぞ降れふれ」でありまする。

 

窓にならぶは…