田中比左良。ひとさし舞って | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 

戦前戦後に活躍した挿絵画家・田中比左良の色紙を見つけ、つい買ってしまった。『新古典舞踊』と題されていて、戦後モダンなお嬢さんがすっと流し目を送りながらひとさし舞っておられる。田中比左良については繰り返し(しつこいほど)取り上げてきたので、いまさらめいて申し訳ないのだが…

 

田中比左良の挿絵模写と色紙全体(右)

 

田中比左良(1891-1974)の人気の絶頂期は昭和10年前後くらい、戦争が近づくほどに彼のようなお色気&ユーモア系の画家の出番は減っていきます。戦後すぐに復帰しますが、微妙に彼の時代は過ぎ去ってしまい、代わって小野佐世男などの、もう少し猥雑エログロ系の画家たちが台頭してきます。

 

田中比左良:スケッチと挿絵原画

 

それでも昭和30年代前半頃まではユーモア系の作家(佐々木邦中野実ら)と組んで活躍されましたが、徐々にユーモアの質が変わってきたこともあり、挿絵(漫画?)協会の会長さんをなさったりしながらフェードアウトしていきます。戦争がなかったら田中の人気はまだまだ続いたはずだったのですが。

 

ところで、手に入れた色紙は全面にシミが浮き出ていてあまり状態はよくないので掲載のものは画像修正を加えました。表具屋さんにシミ抜きしてもらおうか? 思案中です。

 

 

ビニ袋ひとり生彩孕みなお春の孤独の極まるる朝

 

 

満腔のひかり集めるビニふくろ朝のみのりにたじろくわたし