北森鴻の裏京都ミステリー | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 北森鴻「裏京都ミステリー」をプロデュース

 

先年若くして亡くなられた(大好きな)北森鴻の短編連作「孔雀狂想曲」を再読。後をひいて〝裏京都ミステリー〟シリーズ「支那そば館の謎(2003)光文社文庫」を古書店100円棚で見つけこちらも再読した。主人公の有馬次郎は、かつて〝怪盗〟といわれた窃盗を稼業としていたが

 

京都嵐山の古刹「大悲閣」住職との出会いから裏社会から抜け出すと、その貧乏寺の寺男をすることに。ところが、そこに出入りする(天然スチャラカ娘)京都みやこ新聞記者の折原けいが、さまざまな厄介ごとを持ち込む。有馬はやむなく住職の阿吽の許可を得ると、裏世界に入り込むと事件の決着を計る。

 

料理の描写も出色で「生粋の京都人ならば冬の味覚といえば熱々の鰊蕎麦に決めを打つところだが…やはり蕎麦は関東風…脂の乗りきった鴨の胸肉と京葱をごま油で照りつけ、濃いめの出し汁を注いだ「鴨なんば」こそ」は、貧乏寺の寺男に許される至福と宣う。口中に唾が沸き出してくるではないか。

 

たまらず、続編「ぶぶ漬け伝説の謎」をネット注文した。ところで、この作品を映像化するとしたら、主人公有馬次郎(通称アルマジロ)に綾野剛。お騒がせ記者は最初(若いころの)真木ようこ長澤まさみ、あるいは石原さとみとも思ったが「アシガール」の好演を買って黒島結菜を起用してみた。

 

自庭にて

 

今年は故あって、冬囲いに備えて早めに庭木の剪定を始めた。樹々の葉が褐色に収束する晩秋への時候は大好きで、庭に拠って飽きることがない。里山の杣道をイメージ、幼木を植えた後は放恣に伸びるに任せているが、30年ほどしてようやく念いが叶いつつある。人も庭も古びてきたのだ。