岡留安則の〈噂の眞相〉 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 噂の眞相の岡留安則

 

橋本治死去の報に接したばかりなのに、こんどは雑誌〈噂の眞相(1979〜2002年)〉元編集長・岡留安則が亡くなられた。文字通り、スキャンダル&反権力を謳った雑誌で、創刊早々天皇を揶揄するコラージュを掲載したことで、右翼の介入を招き、その右翼を怖れた取引銀行や印刷会社が手を引いたため、いきなり廃刊の危機に陥る。

 

ようやく(長野県だったかな?)印刷屋さんを見つけだし、奥付には印刷元を載せずに発行。スポンサーも撤退したため、わずかに風俗系の広告と(薄い冊子ながらも)販売価格をあげて対応、一方でスポンサーにしばられることなく、当時の地検トップを辞任に追い込んだり、森喜朗首相(当時)を買春歴疑惑で追い込むなど、ほとんど狂犬のごとくあらゆる著名人に噛みついた。

 

噂の眞相と関連本から

 

〈噂の眞相〉バックナンバーは今でも愛読書で、読書疲れしたときの良き軽読物となっている。編集長は亡くなられた岡留安則、東京地検に拘留された副編集長神林広恵、巻頭扉を飾り続けた足立三愛の(今だったら描けないだろう際どい)挿絵、愛読者だからと安価で装釘を請け負った杉浦康平、名物記者・西岡研介、コラムニストは小田嶋隆ナンシー関斎藤美奈子、荒木経惟の写真日記など、濃密すぎる。

 

〈噂の眞相〉は経営的には黒字のまま廃刊した珍しい例で(休刊といっていましたが)終刊間際、終刊後もお祭り騒ぎでしたね。現在の〈週刊文春〉をもっと際どくした編集だったため、個人情報保護法の成立などによって、紙媒体によるスキャンダル雑誌は〈噂の眞相〉をもって引導が渡された感じです。岡留安則は昭和全共闘時代のひとですが、平成の最後も飾ることにもなりました。ご冥福をお祈りします。