小山正太郎。薬師丸ひろ子の〈里見八犬伝〉 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 薬師丸ひろ子の映画〈里見八犬伝〉

 

幕末に書かれた滝沢馬琴「南総里見八犬伝」は「水滸伝」にプロットを借り創作された伝奇もので、それが現代にまで(原本は長大なのでさまざまに変容されつつも)読み継がれている。原本は戦後まで断続的に発行され娯楽作品として一般の(一定の)読者を得ていたのだから瞠目すべき。

 

この馬琴作品は(白井喬二→国枝史郎あたりの)大正末からの伝奇もの時代小説の源流となり、戦後は山田風太郎の忍法帖へと伝えられ、現代のさまざまな伝奇ものへと合流する大河の源流となっている。ということで映画〈里見八犬伝〉は、当時映画館でリアルタイムに観た作品で(女優というよりも)

 

フツーの女の子が主演したことで、角川映画&薬師丸ひろ子は「素人の時代」への門戸を大きく開けることになる。ネットを動画を見返しながら(薬師丸ひろ子の代わりに、自身や身近な女性であってもおかしくないと思わせる設定で)アマチュアが(価値転換され)光輝き始めた時代のとば口にいたが判る。

 

小山正太郎:神将駕雲図 信陽堂石印

 

中谷無崖:かるかや物語(1897)春陽堂

 

最近のコレクションから、明治30年発刊の中谷無崖「かるかや物語」口絵石版画の原画は(われらが新潟県長岡市出身の)小山正太郎です。印刷者は岡村政子の信陽堂で、原画を元に色版ごとに石版に手描きで写しとるといった手作業によって印刷版が作られます。おそらくこの口絵にも岡村政子の手、あるいは監修がなされていると思われる。