石坂洋次郎の若い人 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 石坂洋次郎:若い人(1937)改造社

 

三田文学への「若い人」連載開始は昭和8年5月号で連載当初から好評だった。主人公の間崎はミッション系女子校の独身先生で、同僚でマルクス主義にかぶれている橋本スミ先生、そして(今でいうところの)小悪魔的な美少女江波恵子との三角関係を、間崎の分析的教養主義的(でいて)中庸(リベラル)な会話とモノローグを中心に綴って新鮮だった。

 

そしてなにより魅力的なのは女生徒江波恵子の造形で、遍々として定まらぬ思春期の豊かな感受性の持ち主として描くことに成功しているところだろう。この作品は石原裕次郎と吉永小百合をはじめ、それぞれの時代の旬の俳優によって映像化されているので見比べてみるのも興味深いかもしれない。

 

 

今の若者にすれば間崎先生の衒学的な饒舌口調はおそらく〝ウザイ〟だろうし、江波恵子のような大人を煙に巻く小悪魔などたいして珍しくもないかもしれないが、戦前にロリータの魅力をここまで描きだせたのには、石坂洋次郎が実際に女学校の教師だったこと、実生活においても若くして一緒になった妻の出奔など

 

書かずにいられないような材料が揃っていたこともあるだろう。いわゆる中間小説の先鞭のような作品で、ほとばしるような瑞々しさに満ちている。が、なにやら舌先に苦度が残るようでもある。本作は正続二巻本でようやく正編を読み上げたところ。洒脱な装釘は鈴木信太郎である。

 

 

夜来のひと降りがあったせいか青天で迎えた朝の雲の動きにダイナミクスがある。上の写真は附属小学校で屋上に天体望遠鏡を備えているのだろうか、丸いドームが輝いている。

 

 

通勤時に栖吉川の土手を歩いていると、ウォーキングのご婦人が「向こうにキジがいたよ。今日はオスだけ」とか挨拶をくれる。驚いたのは上の写真。両手に3キロほどの鉄アレーを持っての散歩で… いや、ウォーキングを越えた運動だろうな。とにかく元気な御仁がいらっしゃる。びっくり。

 

 北越銀行本店

 

キュービックな形態が印象的な地方銀行の建物。少し前に同じ地元の銀行との合併が発表された。このエリアは再開発構想に組み込まれていて、銀行としての業務は停止するが建物はそのまま市のサービス機関として生まれ変わるようだ。