市井史「日がへりの旅路」の水島爾保布 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 牧田和久

ワールド “侍ジャパン” ベースボールは盛り上がっているのだろうか。低調な教化試合を横目で眺めながら、サブマリン牧田和久の投球だけは楽しみ。地上すれすれから放られるボールは海面奔る飛び魚のごとくでありまする。

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 市井史:近畿五大都市中心 日がへりの旅路(大8)三宅荘蔵書店

大正時代のポケット旅行ガイド。外函貼り込みの挿絵は水島爾保布(におう)では?、とヤフオク落札したところ案の定。大正に入ると畿内中心にトラベルライターしての爾保布が目立ち始めます。名所絵のペン画とともに簡単なコメントが附されていて、市井史といっしょに名を連ね共著として出版されているところから、この頃にはかなり認知が進んでいたものと思われる。フットワークが軽く絵が描け文章も堪能とあれば、旅行が娯楽として定着した時代にはうってつけです。

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 蘆屋汐見桜(上)と粟津

粟津は「唐崎もいい堅田もいい。石山もいい。矢橋もいい。……八景その一つとして選んだに不服はないが、特に粟津は、啻(ただ)に晴風に於いて勝れたのみでなく、細雨蕭条たる日、駘蕩たる朧夜など、殊更にいい気分を調べる。結構が美しいのでもなく、又眺望が麗らかなのでもない。懐古的情緒のそれとは全く関係もなしに簡素な、そして一種の寂寥味を帯びたところに特殊な趣をもっている」のだそうだ。結局、とりわけてなんてことはないが “一種の” 寂寥味がいいのか? 爾保布の(ちょっと無責任ともとれる)名文を味わって欲しい。