閑話休題:美しい人たち | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 スタイルブック

女性たちは本当に美しくなったが、それはある意味で労働から解き放たれたせいでもある。もちろんそれは男たちにも言えることだが、スタイルブックのスケッチが増えるほどに、かすかな影がきざしてきて、描きながら奇妙に落ち着かない自分に気づいたりする。たとえば、労働しない肉体はどうして年齢と折り合っていくのだろう。美しいだけの、可愛いだけの肉体はどうやって朽ちていけばいいのだろう。

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 スタイルブック

きちんと働き老いることこそが人生だったほずなのに、亡くなった母や祖母たちの節くれ立った指や関節、わらじのように垂れ下がった祖母の乳房は幻だったのだろうか。少女のような50代、あるいは60代が望まれ可能な時代というのは、やはり息苦しくはないだろうか。農家の次男坊として子どもの頃から肉体労働をしてきたせいだろうけれど、労働を忘れた(自分を含めた)肉体のどこに実体はあるのだろうか。スケッチするほどに、ある種切迫観念のようなものが澱のように沈殿する。