上野千鶴子「男おひとりさま道」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
$.-ごむとり
 ゴムとり(昔のあそび)

さすがに「ゴムとり」はしなかったが、子どもの頃はこうした反復行為をえんえんとやったものだ。徐々に身体の使い方を開拓し身に付いて行くのが面白い時期なのだと思う。キャッチボールなども、肘を畳みながら肩を廻し反動を利用、体重移動しつつボールを投げるというのはかなり複雑高度な運動で、ボールをコントロールし速く投げられるようになるのは快感を伴った。そういうことであればテレビゲームも似たようなものだが、こちらは指先の反射運動で快感の質がちょっと違うように思える。まぁどちらも訓練が必要なのは一緒だけどね。

上野千鶴子:男おひとりさま道(H21)法研

先日TVでの上野千鶴子が身にまとう虚無感(のようなもの)に惹かれて図書館から適当に借出した。彼女は現在フェミニズム運動における最強の論客のひとりといっていいだろう。反響が多かった前著「おひとりさまの老後」あとがきに「男の老後?知ったこっちゃない」と書いたそうだが、多少なりとも濡れ落葉族に惻隠の情を感じたのか本書が出版された。非婚離婚死別を含めて、これから老後の独り暮らしは増えていく。そのサヴァイバル術を伝授している。

男性は母に依存し妻に依存し、PPK(ピンピンコロリ)と妻に看取られ颯爽と逝くものと決めつけているが、なかなかそうは問屋がゆるさない(のだそうだ)。身体に障害が生じなば、本人の意思にかかわらず家人の都合でホームステイや施設に送り込まれる。たとえ独りになっても自宅で終焉するにはそれなりの技術がいる。「人生は死ぬまでの壮大な暇つぶし」だから、精神的にも(衣食住に関する)技術的にも自立するにしくはない。そのためには…というのが当本の主旨でありまする。

文字の大きな本ゆえ一晩で読める。気になる人はさらっておくがいい。私は「おひとりさま力」のあるほうですから「そうだよねー」とひとりごちましたが、それでも幾分の甘さを指摘されましたね。妻子に見放され定年ちらつく趣味なし会社人間のあなたは、ぜひ読みなさい。文体に折々顕われる上野千鶴子のシニシズムはちょっと癖になりそうで、ヤバイ。そうそう、上野にとって「学問は自分がすっきりしたいだけの、死ぬまでの極道」だそうだ。これぞハードボイルドではないか。