瀬戸内寂聴「奇縁まんだら」の横尾忠則 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
$.-奇縁まんだら
瀬戸内寂聴:奇縁まんだら新聞切抜

日経新聞紙上で随分長く連載していた様子で、現在単行本で4冊にまとめられている。その一部新聞切抜を読んでみた。佐藤春夫が谷崎潤一郎の妻千代を貰い受けたのはよく知られているが、その千代が佐藤に再嫁するまえに、小説家志望で谷崎家の秘書だった和田六郎と恋愛関係に落ち肉体関係もあった。この妻と六郎の不倫を同時進行形で連載したのが「蓼喰ふ虫」で、春夫にもそのことを伝えられた。六郎はものすごい美青年で、一時は千代と心中のほぞを固めたが、結局別れさせられた。

その六郎は後に美人の人妻とふたたび不倫に落ちやがて略奪婚に至ると、その妻ともども佐藤家と親戚付き合いをするようになる。六郎はこの後3年ほど佐藤に私淑し小説技術を学ぶと、その師の推挙によって大坪砂男のペンネームで発表されたのが、彼の代表作「天狗」である。谷崎の佐藤への妻移譲事件はよく知っているつもりでいたのに、まだまだ奥の奥があったのですね。佐藤春夫は(よく判らないけど)大きいなぁ。

挿絵は横尾忠則。あまり好みではないのですが、ここでの横尾はいいですね。おそらく原画よりも印刷版のほうが効果がでているかもしれません。見事です。