黒岩比佐子「明治のお嬢さま」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
$.-明治のお嬢さま
黒岩比佐子:明治のお嬢さま(平20)角川選書

明治時代に入って士農工商は廃止されたが、当然ながら身分制度が急になくなるということはない。華族と豪商たちによる上流階級は、互いに地位名誉と金銭経済をスワップしながら婚姻を重ねていく。そうした時代の上流のお嬢さまの目的はというというと、より有利な結婚という一点に尽きる。かつての上流は現在とは比べ物にならないほどで、格差という言葉すら無意味に思われる。華族学校ができると花嫁選びの場となり、明治半ば写真撮影が普及しだすと深窓の令嬢たちは見合写真の写りいかんに腐心する。

三越デパート内にドレスなど衣裳を揃え撮影スタジオを設けたところ、美人に写ると大評判になったりする。その写真がグラフ紙に掲載され、結果良縁を得る、その若妻写真を再び再掲載することで、結構上流に嫉妬構造ができあがったらしい。また、明治も30年頃までは妾を持つのは普通、妻妾同居もかなりだったがら、人形状態で嫁ぐお嬢さまが幸せだとはとても思えない。当時の雑誌類を丹念に徒渉した著作で、その綿密さに頭が下がる。女性に一読をお勧めする。