吉田秀和さんの死 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
$.-吉田秀和
吉田秀和

音楽評論家の吉田秀和さんが22日に亡くなられた。吉田さんが担当している本日のFM番組「名曲のたのしみ 私の試聴室」放送後に訃報が流され、相変わらずの解説を聞いたばかりだったから本当に驚いた。なお数週分の収録が済んでいてそれが最後の放送となる。

かつて、グレン・グールドのディスク、モーツァルトの「ピアノソナタ集」でアダージョをアレグロで演奏したりといったトリッキーな録音を、他の評論家が「冒瀆だ。許せない」という論調だったのに対し、吉田さんは「なぜ彼はこうした演奏をしたのか」といった立ち位置で考察し、どちらかといえば感覚的で「好き嫌い」で論じられることが多かった音楽評論の世界に論理的な思考を持ち込んだ。

晩年のウラジミール・ホロヴィッツの初来日演奏に対して、吉田によって「すでに骨董品」と評されたホロヴィッツは「吉田に聴かせる」と再来日を果たし雪辱の演奏を披露したエピソードはよく知られている。また、吉田は小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラ結成に尽力した。私自身彼から多くのことを学んだ。心からご冥福をお祈りします。