柳川春葉「かたおもい」と新藤兼人逝く | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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新藤兼人

こちらはずいぶん訃報報道が流れた。墨田ユキ、津川雅彦(乙羽信子も)による「濹東綺譚(1992)」は観ましたが、エピローグは余計だったような。DVD「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録(1975)」は観てみたい。100歳ですか。大往生ですね。

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柳川春葉:かたおもい(1913)東京日日新聞

当時新聞のスクラップ(大正2年11月23~大正3年2月28日/98回分)で、残念ながら尻切れコレクションです。春葉の代表作「なさぬ仲」の後に書かれた作品で「かたおもい」とありますが恋愛ものではありません。こうした作品は一般に「家庭小説」と呼ばれ、明治30年代の徳冨蘆花「不如帰」尾崎紅葉「金色夜叉」あたりから盛んになり、新聞雑誌が読者獲得のために競って(主に女性読者のために)連載を始めます。

「家庭小説」は翻訳物を起源に、やがて夏目漱石「虞美人草(1907)」や森田草平の私小説「煤煙(1908)」などを経て、昭和初期に隆盛を極めると、諧謔(ユーモア)ものと合流して軽文学やホームドラマなどの母体となります。この「家庭小説」流行の一方の立役者が挿絵で、薄幸な女性たちを描いては女性読者の紅涙をしぼったのですね。「かたおもい」挿絵を担当したのは鰭崎英朋で、大正時代の第一人者でした。ちょっと不鮮明な写真製版で残念ですがまずまず楽しめます。