北原亞以子「慶次郎縁側日記」傷/再会 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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北原亞以子:慶次郎縁側日記 傷/再会(1998)

北原亞以子「慶次郎縁側日記」最初はシリーズ化する予定ではなかったようすで、元定廻同心森口慶次郎をめぐる人々の人間模様を描いた短編集といったところ。初巻を出版するにあたって、話の整合をとるために発表順を入れ替えたが、慶次郎の養子にいきなり嫁がいたりと幾分の無理がある。2巻目「再会」からは短編連作の形が整えられた。“仏”とあだなされる慶次郎は、家督をゆずると商家の寮番として自適の隠居生活にはいる。そこでもさまざまな事件が待ち受け、穏便に決着することを旨としていた。

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北原亞以子:慶次郎縁側日記 傷
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北原亞以子:慶次郎縁側日記 再会

慶次郎と18歳になる三千代の父娘二人暮らし、三千代は婚礼をひかえ心浮き立つような日々を送っていたが、ある日暴漢にレイプされそれを苦に自ら命を絶つ。罪を憎んで人を憎まずを信条に務めてきた“仏”の慶次郎に勃然と復讐心が巻き起こる。殺してやる。我を失って暴漢魔を追い続ける慶次郎だが、さて…。装幀挿絵は蓬田やすひろ、わたしが最初に挿絵にめざめた画家で、彼は挿絵師→イラストレーターに変化していく過程を体現したひとです。

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慶次郎縁側日記:再会 扉:蓬田やすひろ

NHK再放送を見てちょっと読む気になったのですが、改めてTV放送(H17.12)が見事なのに驚きました。脚本の宮村優子、山本むつみ。回想の森口三千代(慶次郎の娘)役の岡本綾は可憐で涙をさそうのですが、三千代を死なせる暴漢の娘おぶん役の邑野みあに釘付けです。美人はそれだけで目立つものですが、おぶんはくすんだ田舎娘で器量も並みながら存在感を示しています。そのうち一枚描いてみたいものです。