島崎藤村「水彩画家」と梁塵秘抄 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
.-水彩画家
島崎藤村:水彩画家:新小説口絵 渡辺審也(明治37年1月号)

島崎藤村「水彩画家」の初出誌「新小説」が(探していたわけではないのですが、偶然)見つかった。この作品に登場する悲恋のヴァイオリニスト橘糸重については、まことに罪作りな作品であったと随分前に書いた。雑誌附録の鰭崎英朋、山中古洞の絵はがきは綴じ込まれていまぜず、残念。明治のこの頃、絵はがきブームが巻き起こったことについても幾度か書いた。この「水彩画家」の挿絵に興味津々だったのですが、いっさい掲載がないのですね。やれやれです。

さて、「平清盛」NHK大河ドラマは久しぶりに見続けています。平安時代は超格差社会だったはずですから、汚いといわれる画面も楽しく拝見しています。放送中に「梁塵秘抄」所収で知られる“今様(当時の歌謡曲)”がよく流れます。

 遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん
 遊ぶ子供の声きけば 我が身さえこそ動がるれ

小西甚一校註「梁塵秘抄」によると、市井で歌われた“今様”は全体の一部、しかも不確かな写本のみしか伝わっていないそうだが、蒐集記録してくだされた後白河院には感謝申し上げなければならない。後白河院はTV出演中の(白河院と不倫?関係にあった璋子と)鳥羽院の第4子で、この後、源氏平氏と絶妙に渡り合うことになる。「遊びをせんとや生れけむ…」AKB48にでも歌わせて再び流行らかしたらよろし。

$.-新小説
雑誌新小説(明治37年1月号)