旅立つ迄 我学ぶ | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
みずすまし亭通信-携帯女

よんどころない仕事が入って3連休を棒にふった。海の日祝日も電気を点けずにモニターに向かっていたら、腰の曲がった婆さんが「ちょっと見せてくれろ」と事務所に入り込み、応答を待たずに靴を脱ぎはじめる。外から、事務所の壁に掛けておいた小面(こおもて)黒式尉(こくしきじょう)の能面が見えた。子どもの頃よく蔵に入れられ、小面の面が遊び相手だった。木(製)だね。私は幾つに見える? 頭髪は黒かろ、これは地毛で当年83歳である。鉛筆はありますか。

 みじかい夏も 間も無く終ります
 ねむる聖もぬす人も みな
 土くれの紙一重 儚き人の世を
 終りに 旅立つ迄 我学ぶ  (サカイ女)

毎日筆を持っているので爪が真黒だ。ほら。鉛筆でなければもっと上手に書けるがと、上記の歌を紙に書き付ける。読んでみよ。というので、声を上げて読みました。まことに気概の感じられる歌でございます。私より若いですねと申し上げたら、否定はされませんでした。30分ほど事務所にお留まりになり帰ってゆかれました。足下にお気をつけください。さて、老いたらこの手があったか。いきなり他人の家に入いりこんで、あれ見せろこれ見せろ。食い物無いか、とはいかないか。さて