「寺崎日本植物図譜」と金子元臣「古今和歌集評釈」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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普段お世話になっている分厚い本2冊。「寺崎日本植物図譜」はすべてペン描きの植物図鑑で、寺崎留吉博士が一生をかけて作り上げた。弟子によって改訂され4000図以上の手描き挿絵が挿入されている。そのすべての挿絵のタッチが均一なのにほとほと感心する。上達するとか、ましてや下手になるということがない。ただ、お弟子さんの挿絵は微妙に分るがいたしかたない。もう20年以上も前に買ったもので、写真による図鑑があるのにこちらが便利だ。

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金子元臣「古今和歌集評釈」は明治40年にまとめられたものの、昭和2年新版。季節が変わる頃になると引っ張りだしては眺めている。

 み吉野の山べに咲けるさくら花雪かとのみぞあやまたれる

紀友則の歌。雪かと思ったら桜だね。まちがってしまいましたよ。吉野は桜の名所の前は深雪を詠われていた。日本の心を万葉集に求める人は多いが、古今和歌集以降はほとんど現代の感覚で理解もでき判りやすい。私には古今や新古今和歌集のほうが好きだ。

 吉野山桜が枝に雪ちりて花おそげなる年にもあるかな

まるで最近の開花降雪風景を詠っているようだが西行の詠歌である。