第2章 レコードと映画のサウンドトラック | 音楽をめぐる冒険(いかにして僕は音楽のとりことなったのか)

音楽をめぐる冒険(いかにして僕は音楽のとりことなったのか)

昭和の時代の音楽を巡るいろいろな話をしましょう。

 

前回に続きレコードの話をしたいと思います。僕がレコードを買いだしたのは中学生時代でしたが、もうひとつ夢中になっていたのが映画でした。休みの日は名画座三本立てをダブルで観たりしました。そしてもちろんスクリーンの中で流れる音楽に夢中になった。うちに帰ってから日を改めて映画で流れていた曲をピアノで探って弾いたりしていました。日を改めて、というのは夜遅くに帰ったのでもうその日はピアノを弾くことができなかったからです。今から考えると信じられないのですが、映画で流れていた曲を一生懸命覚えて帰ってきたものです。バスに乗る間も忘れないようにエンドレスで頭の中で鳴らし続けて帰りました。今みたいにちょっと気になった音楽があったらネットで調べると大体YouTube にアップされていて、とかいう時代じゃないのです。一歩劇場を出たらあとは自分の記憶力だけが頼りだった。だからどうしても思い出せないところがあったり曖昧だったりなんて日常茶飯事だった。

やがてレコードでサウンドトラック、いわゆるサントラを買えることを知り好きな映画のサントラを買うようになりました。ただ、これも一筋縄でいかなかった。当時、サントラにも2種類あったのです。アタリは映画で流れていた音がそのまま真空パックで入っているような感動もの。そしてハズレは一応曲は同じ曲をやってるのに楽器編成だかアレンジだかが違ってなんかバッタもんみたいな音が鳴るやつ。何度か失敗したあと、どうやらオリジナルサウンドトラック と書いてあるものが本物らしいということがわかってきたのです。それ以来そう書いてないものは避けるようになりました。中2の時アラン・ドロンのビッグガンという映画を観て感動してすぐサントラを買いに行きました。オープニングでトリノの夜の街を車で走るアラン・ドロン。その運転席でのアップをネオンサインをバックに延々と撮っていて、そこに女性ボーカルの曲が流れていて素晴らしく印象的でした。レコードをかけた時その曲が流れてきた時は本物を買えたとたまらなくうれしくなりました。が、聴き進むと思わず心臓が止まるかと思うくらいびっくりすることがおきました。ワンコーラス目が終わった時にギタリストが音を間違えたのです。あっ、、心臓がバクバクバク、でもレコード盤の製品となって売られているものでそんな間違えがあるわけありません。実はマイコーラス、キーが半音ずつ転調していくアレンジになっていて、ギタリストが前のキーにかぶって半音上のフレーズを弾いただけの話でした。でも最初にヘッドフォンで聴いた時は本当に間違えたと思って心臓が飛び出るかと思ったものです。オルネラ・バノーニの逢引という曲で、のちにCDで聴いてみたくなって探してみたのですが手に入りませんでした。Ornella Vanoni の L’Appuntamento というところまではわかったのですが…  でものちに思いもよらぬところで感動の再会となるのです。ジョージ・クルーニーのオーシャンズ12 を観ていたら劇中で流れてきたのです。すぐにオーシャンズのオリジナルサウンドトラックのCDを買ってめでたく手に入れることができました。笑っちゃうのはその音が明らかにアナログ盤からそのままおとしたようだったことです。思わずうれしくなりました。そしてこの曲は今ではBS日テレの小さな村の物語のオープニングテーマとして使われるようになっています。ご存知の方も多いのではないでしょうか?