口語体を基本にした俳句集です。

口語体・現代仮名遣い・現代的切れ字を基本にして詠んだ句をまとめました。

2022年の年間作品集になります。
よろしければご覧になってみてください。


下記の文語体や歴史的仮名づかい・古切れ字を使っていないこともご確認ください。

や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・し・き・等々

また口語体で俳句を詠むと稚拙になるのかについても検証など行ってみてください。


*俳句でいう「口語」は現代語の文体、「文語」は平安時代の文法に基づく文体ともされています

*作品はすべて既発表句です




口語俳句
330句
〜2022年 作品集〜

◇ 夏の句 ◇

山頂よどこから見てもこいのぼり

瀬戸のかぜ満帆にしてヨット行く

たかだかとわきあがってよ楠若葉

新樹光野のはらに立ついっぽんが

たけが生え朔太郎忌をたけが生え

三日ほど風をかんじてころも更え

さいげつよあともどりなく衣更え

一本のくきからはらり花しょうぶ

かきつばた淵のいろして池のうえ

かたつむり四本のつのいそがしく

手に手によ苗束ゆれる田植えどき

雲だけが自由ほんぽう田植えどき

あめんぼよながれる雲よ水のうえ

傘はみな虹になったということか

おおぞらに放流するか梅雨のダム

ながれ去る街のあかりよ梅雨の夜

母として母をしのぶかほたるの夜

さいげつのしずかさをきく風鈴よ

世も人も変わりかわらず夏まつり

うたいつつかわりゆくうた祭の夜

みずからを懐かしみつつ手花火よ

恋ごころほどのあかるさ手花火よ

二三夜はほしぞらのなか旅ゆかた

来る河のながれは絶えず鮎がとぶ

蟻いっぴき葉のさきに立つ大自然

登山杖かつかつと行くおおぞらよ

かっこうのこえ山の声かもしれず

足もとに杉の木漏れ日ほととぎす

なお奥にいざなうか山ほととぎす

うしろ手をつけば富士見え風薫る

しんしんと無があるだけよ蟻地獄

青りんごかりりと雨後の鬱晴らす

満天に神話かがやきキャンプの火

安心よ星のあかりとキャンプの火

夜の闇深くするかにキャンプの火

北極星夜ごとひとつのすずしさよ

ハンモックほしのせかいは無限大

珈琲よ朝いちばんのキャンプの火

そのおとも諸行無常のふうりんよ

歩道橋どちらを見てもなつつばめ

アイスティー喜怒哀楽の街あるく

島じゅうよ青葉若葉のかぜのおと

おおぞらのざわめくことよ木下闇

山の坂のぼるほどによほととぎす

戦争よとおのいてゆくせみしぐれ

アロハシャツ戦争平和なみのおと

どの子にもねむるちからよ夏布団

どっしりといのちいだいて金魚鉢

みずくさもゆらりゆらりと金魚鉢

なにおもうなにもおもわず大夕焼

夏の海すべてゆるしてきらめくか

こうだいなへいわなみうつ麦の秋

この町よ打ち水のそらひろびろと

せみしぐれ「こころ」一冊机の上

ふうりんよ時代じだいの風のおと

一天を押しあげているふんすいよ

棒はじく皮のあつさよすいか割り

およぎ出てたいへいようを一望よ

さざなみのいくせんまんよ浜日傘

ヨットみなしの字しの字よ凪の海

その底に遺跡がいくつなつのうみ

開放感ミントのアイスクリームよ

ラジオFMゆうぐれてゆく海の家

ゆうだちのあと夕映えをゆく船よ

この国の平和いつまでなつのうみ

夏蜜柑剥くこんしんのちからこぶ

すぎた日が呼んでいるかに風鈴よ

むっくりと起きあがるため大昼寝

踏み入ればざわめきやまず青葉山

どかと立つ背中たたいて牛冷やす

ひろびろと村あらわれよ草刈り機

麦わら帽子少年たちはあたらしく

ふりまわしあうのが角よかぶと虫

火あがってなおもあおぐか土用鰻

帆おろしてならぶ帆ばしら大夕焼

星空のまっただなかのベランダよ

部屋のなかただよい続け夜の金魚

冷蔵庫じかんが冷えてゆくおとか

ながながと美のなかにいて大朝焼

鳴くほどに世があかるいぞ四十雀

教会のひっそりとして薔薇のなか

花言葉ありありと秘め薔薇ひらく

黙としてあゆみ去れずよえごの花

茹で洗う水また水よ冷やそうめん

生きてきた時代あかあか夕焼け空

ほしぞらのせいじゃく野外演奏よ

じんるいのはんぶん眠るなつの月

うみがめとともに月あるすな浜よ

島じゅうの家沖むいてせみしぐれ



◇ 秋の句 ◇

テレビ塔そらにもしんと秋立つか

指さして星ものがたりたなばた竹

たんざくの文字ざわめくか七夕竹

屋じょうよ町より近くあまのがわ

せんこうの火のちいささよ盆支度

その若さかくしきれずよ盆おどり

とおのく灯わすれわすれず流灯会

大花火どどんとへいわつらぬけよ

ひらくたび路地くらくなる遠花火

しばらくは空見ているか花火あと

すずむしよ山ちかくあるものに山

虫のこえ星ぞらほどににぎやかで

吾亦紅あかく咲いても咲いてもよ

はばたいてひかりふりまく秋蝶よ

鷺立ってひかりせせらぐあきの川

ひとり来てふたりの音よ木賊刈り

えきびょうに国も痩せたか扇置く

富士ひとつ吹きのこしてよ秋の風

教習車ゆるゆると行くあきのくれ

まちじゅうが影絵のようよ秋夕焼

島のそら縦にながれてあまのがわ

踏んでゆくひとりひとりが白露よ

一枚の間を吊りさげてあきすだれ

巻き上げて東京があるあきすだれ

東京タワー歴史が立っている秋よ

息吐いてあたため酒ということか

庭にでて待つほどもなく今日の月

照らされてみればみるほど名月よ

揺れゆれてみなとの舟も十六夜よ

天文台夜々落ちかかるあまのがわ

一点のビッグバンよりあまのがわ

鳴くほどにしずまってゆく虫籠よ

うれしさは立待ち月のあかるさよ

コスモスよそのそらたかく時計塔

ひがしからにしのそらまで大花野

そらじゅうを雲がゆく忌よ山頭火

鐘ついて塵ただようかあきのくれ

変わらずに撞くとうとさよ鐘の秋

秋へんろわすれられつつ旅ゆくか

あきへんろ五重の塔とゆうばえて

まっすぐに立ててすすきの生花か

ぶつけあう声よ神輿よあきまつり

りんご飴手ごとにあかく秋まつり

ロープウェイ天守閣までもみじ山

書く日記自分じしんのあきのこえ

電話して都市といなかのながい夜

虫のこえだんだんうたに星の夜よ

住みなれた町を背にして草絮吹く

絮とんで白のせかいよすすきはら

そのなかをゆく自転車よ穂絮とぶ

さまざまのあかをつくして紅葉山

トンネルを抜けるほどによ紅葉山

バス降りて紅葉かつ散る風のなか

千々にある島も紅葉のあかるさよ

秋ぞらに島はそびえてかもめとぶ

鯊を釣る仕掛けづくりよゆびに風

波打ち際たどりあるいて秋あわれ

島の木々横に吹かれてたいふうか

くさの露ぽたりぽたりよ川のうえ

電線は路地から路地へあきのくれ

秋の果スーツケースをひきずって

一人見て名残りの月ということか

昨日より京あたらしくあさがおよ

顔あげて黄のおおぞらよ銀杏散る

たちあがるリス二三匹木の実降る

手に手によスポーツの日の各国旗

はば跳びの踏みきるたびよ秋の空

一馬身ぬけだす騎手よあきのかぜ

秋の鳶揚がりあがって羽ばたかず

ひとりずつ街をともして秋の灯よ

パソコンに顔照らされてながい夜

傘にも灯路上にも灯よあきのあめ

草わた飛ぶ阿蘇山麓ということか

空じゅうの綿に夕陽よすすきはら

背後から空につぎつぎばったとぶ

立ったまま崩れて案山子雨のなか

からまつにからまつのかぜ白秋忌

ごとと置く湯飲みがひとつ冬用意



◇ 冬の句 ◇

歩むたび言葉うしなう木枯らしよ

のぞきこむかおうつるかに龍の玉

目に浮かぶ旅びとひとり芭蕉忌よ

陽の椅子にふかくもたれて十一月

子にうまれ子犬にうまれ日向ぼこ

じぶんまでばくぜんとして冬霧よ

この星の変化のなかよ落ち葉焚き

鳴くほどに星またたくかふゆの虫

焚き火してしんととおのく星々よ

鉄道員ひとりひとりに降るゆきよ

あおぐ身に咲きつづけてよ雪の花

雪だるまは仮りのすがたか日の光

ゆきだるまつくるにほんの風景よ

鼻むけたさきにかおるか枇杷の花

えだひろげ空き家の木々よ帰り花

点々とおおうなばらをイルカ跳ぶ

ひとつずつ名がかがやいて冬の星

おそるべき未知ひろがって冬銀河

湯気噴いて一気火勢のなべ焼きよ

そらあおぐじぶんも雲かふゆの旅

かがやきに降りだすゆきの金閣よ

しずかさに降りだすゆきの銀閣よ

一口よ和菓子の名にもはつしぐれ

しずけさを踏んであるくか枯木山

だいぶつのあしもとに陽よ冬の草

オートバイ冬夕焼けが染めて野よ

えださきに木々は寒星かがやかす

首立ててみずうみじゅうの白鳥よ

一羽翔つみずうみじゅうの白鳥と

白鳥に明けては暮れてみずうみよ

かざす手の黙々としてストーブよ

踏みしめてじぶんの音か枯れ野道

立としてたたずむ鶴のしずけさよ

さわぎだす路上の落ち葉つむじ風

ながれくる水よひかりよふゆの河

マラソンのいちまんにんの白息よ

擦る墨はすずりのうみへ雪降る夜

来年を見つめていれば降るゆきよ

たちのぼる湯気鎮めつつ餅つきか

えだえだのあかるむ空よ冬ざくら

ゆきだるま本土見つめて立つ浜よ

松のえだ雲のようによとしのくれ

引越しの部屋にのこして古ごよみ

たかい嶺雪をかさねてとしのくれ

煤湯出て星がゆたかであることよ

背をながす煤湯の湯気の白さこそ

だいぶつのいちねんの黙年のくれ

つぎつぎに今年をくべて年の火よ

鳴るたびに夜闇ふるえて除夜の鐘

舞う雪をつきふるわすか除夜の鐘

よこたわる八重雲からよ初日の出

あいさつのいち語いち語が花の春

絶えまなく鳴る大鈴よはつもうで

時代なおすすみつづけてかがみ餅

静じゃくを爪弾いてより琴はじめ

くびすすめあしをすすめて初鶴よ

受け付けにいちりん挿しよ花の春

空港はちきゅうとひとつ冬夕映え

天赦日のなんのけはいに初鳩飛ぶ

くりかえす日の入り日の出初神楽

さざんかよ神社はひと重寺は八重

野のはてのけはい見つめて冬の鹿

そしていまつむじ風吹く風邪の町

早梅よ二階のまどのきょうあした

マンションのいっ戸いっ戸が春隣

たつ鳥よ日がさしこんで狩りの山

枝さきをぽたりぽたりとふゆの霧

寒つばき島とひとつに日あたって

アルプスよざわわざわわと水仙花

こえふたつたたかう空よ寒がらす

五重の塔五重をつたうふゆのあめ

夕映えてアルプスというスキー山

犬がきえ犬小屋がきえふゆすみれ

消防車おとたててゆくひろい世よ

白鳥がいて暮れのこるみずうみよ

いっぽんのまんねん筆も春を待つ

寒つばきおしみなく花くりだして

島に陽のあたりどおしよふゆの海

世の中のなにかが変わり降る雪よ

飛立ってまた飛んでくる寒すずめ

あるく鳩羽ばたきがちよ明日の春

早梅よあすを見ているきょうの庭



◇ 春の句 ◇

いっせいにすずめが飛んで寒の明

つぎつぎにえだ咲きのぼる白梅よ

香つぎつぎ咲きひろがって梅の枝

うぐいすよ鳴きやむ平和鳴く平和

船旅よみなとみなとのはるかもめ

さいげつを波があらうかさくら貝

さえずりがさえずりをよぶ島々よ

のどかさようしろ手ついて芝の上

手のえさにくちばしいくつ春の鳩

一重咲き八重咲きすべて牡丹の芽

軍国かわれてはじけてしゃぼん玉

平和さよ雨あがるたびしゃぼん玉

過去へ消えみらいへ消えて石鹸玉

大ぞらのまんなかにある巣箱こそ

ふりあげてへいわのくわよ畑打つ

たがやすか夕日のなかに影ひとつ

古代碑の一つしずかにかげろうか

死も生もかなしいことよしじみ汁

むかしからむかしのままか春の月

ペルシャ猫ふわりと立上がる恋か

極東にあさいちばんのさえずりよ

研ぎといで鉛筆画家よ木の芽どき

鳥かえる空にもみちがあるように

侵攻かあしあとふかくはるのどろ

侵攻かがれきを跳ねるすずめの子

侵攻といちりんの黄のたんぽぽと

難民のにしへにしへとかげろうか

とぶ蝶よ白とも黄ともひかりとも

平和デモ路じょうに残る雪踏んで

たんぽぽ吹く表も裏もある路地で

できることいたく少なく花種蒔く

アフリカ象アフリカ知らず春の雪

花虻につねにいちりん揺れやまず

一人静咲けばかまくらものがたり

百吹いて夕ぞらひとつしゃぼん玉

こえのかずだけのあしたよ卒業歌

とおぞらはひとえにとおく連凧よ

あおぎみて花あおぎみてよしの山

かおを出すいちにいさんよ燕の巣

軒下よひと寄せつけずつばめの巣

さす傘につもりつもらずぼたん雪

ゆうぐれてぴたりと静よ雪やなぎ

せんそうかへいわかへいわ春祭り

家いえよいちおくにんにはるの月

エイプリルフールと青い地球儀と

切りながら過ぎゆくはるよ美容室

街あるくひとりひとりよはるの色

春をひらくスーツケースよ新任地

はるの鳩翔っても翔っても曇天よ

窓また窓都市また都市を鳥かえる

ホップコーン袋をあふれだす春よ

たたずんでこれが平和か花の都市

スカイツリーふぶく桜の上にこそ

カンバスよえがく桜もちるさくら

おもいでの桜おのずとふぶきだす

うみ越えて映画がやってくる春よ

コーヒーを待ち人を待ち永い日よ

都市の空はるばると越え黄砂降る

村人は居ないかに居てあたたかよ

なにがある大山があるあさざくら

土のいろあざやかに畑たがやすか

えんそくの子を海がよぶ山がよぶ

たくさんのはなびらのなか花見舟

うなばらをむいて彼岸の墓ならぶ

かけてゆくじゆうな子らよ春日傘

田の蛙かおだけだしてゆうばえて

おぼろ夜よかげとしてたつ磯の松

夜のやみのどこともしれず蛙鳴く

ふえていくいっ冊ずつよ春の書架

この路地を花いっぱいに花種蒔く

駅塔よ日矢いくすじもはるのくれ

雁かえる北はさびしくうつくしく

ぜっぺきよしぶきをそらに春の滝

やどかりがおおきな目して砂の上

灯台よ瀬戸いっせいにはるのくれ

旅客機よおおきなはるの月のなか

絮とばすたんぽぽいくつ城のあと

咲きのこる一つ二つよわすれな草

うららかよどこあるいても草千里

屋上よなおたかく吹くしゃぼん玉

芝刈り機はたらきだして春終わる


2022年
1月1日〜12月31日


いつも
ご覧いただき
ありがとうございます


◇ 関連記事 ◇