現代語を基本にした俳句集です。

現代語・現代仮名遣い・現代的切れ字を基本にして詠んだ句を集めました。

よろしければご覧になってみてください。


下記の古典語や歴史的仮名遣い・古典的切れ字を使っていないこともご確認ください。

や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・し・き・等々

また現代語(口語体)で俳句を詠むと俗・稚拙になるのかについても検証など行ってみてください。


※作品はすべて既発表句です
※随時更新していきます




現代俳句
作品集
〜700句〜


◇ 春の章 ◇

にっぽんのかおりの梅の花ひらく

つぎつぎとそら染めてゆく紅梅か

伊勢神宮おおきな春の日だまりに

木々の芽のひとしずくずつ雪解よ

大ぞらを描いている画家春が来る

春立つかひがしに筑波にしに富士

来る春よ蛇口を落ちるみずのおと


うぐいすの空をひらいてゆく声よ


梅いちりんにりんさんりん天満宮

かもめとぶ沖にまで春およんだか

はるの海初心がしんとあるだけよ

さいげつを波があらうかさくら貝

一つ一つちいさな地球木の芽吹く

きたぐによ木の芽はひとつずつ光

つぎつぎにえだ咲きのぼる白梅よ

せんせいにせんせいがいて梅の花

イヤホンにぽんと触れれば春の歌

輪郭がだんだん富士よ春あけぼの

航跡は消えのこるみちかぜひかる

おおごえで売っているのは春告魚

うぐいすよ鳴きやむ平和鳴く平和

春の鹿そらへさびしいかお上げよ

えいえんにはるのゆきふる法隆寺

鐘ついて余寒のそらをふるわすか

コンビニがうつくしい夜ぼたん雪

さす傘につもりつもらずぼたん雪

ひとすじにひかる大河の雪解けよ

さんじゅうは咲きでてくるか庭椿

一重咲き八重咲きすべて牡丹の芽

生きるとは後ろすがたか利休の忌

ちんもくよやがてしずかに春の滝

北を見ればどこまでも北鳥かえる

ふるさとがみえてくるのは春炬燵

家族写真とおいむかしの春のまま

小ながれがもつれあってよ春の川

凧ひとつぜっちょうにある夕空よ

凧の空この村はまだだいじょうぶ

にわとりが跳び闘うぞかぜひかる

古代碑の一つしずかにかげろうか

じんるいのゆめのはじめの畑打よ

たね蒔きよ日あたっている金峰山

てのひらに落ち街に落ちぼたん雪

船旅よみなとみなとのはるかもめ

かもめらよ知り得もせずに春の海

草もちのよくのびてこそひとり旅

春の富士羯鼓がひびきだすように

うららかよ富士麗かようららかよ

ひと吹きでもう晩年よしゃぼん玉

春満月そうつぶやいてしまうほど

ぼんぼりよあかるくくらく飾り雛

飾り雛流行りやまいもなんのその

流し雛うしろすがたであってこそ

海女ひとりふたり歴史の波の間に

さえずりがさえずりをよぶ島々よ

大空をひっくりかえしつばめとぶ

春の海見るおんがくということか

和歌よふと生きているかに西行忌

西行のおもいのこしのない忌こそ

鳩の空いのち見あげるあたたかさ

じんせいにときおりよい日梅の花

目つぶって蛙もきっとうららかよ

田の蛙かおだけだしてゆうばえて

寝について奈良は蛙のこえのなか

そよかぜよ空ふるわせて初ざくら

目にうかぶ満開のそらはつざくら

無になってながめる花よ花のなか

つかのまのへいわながらも花の宴

ふぶきだすそらいちめんよ大花見

どの人も花とふぶいていることよ

あおぎみて花あおぎみてよしの山

にぎやかに来て沈黙のやまざくら

花見してはるばると時こえゆくか

夜ざくらよ月とも違うほのあかり

総本山に喝がひびいてのどかさよ

自動運転木の芽の道をまっすぐに

そうぞうがそのまま都市に春の月

にしのそらひがしのそらよ凧合戦

とおぞらはひとえにとおく連凧よ


八重桜世がながながとあかるいぞ

家建ててそれからながい春のゆめ

あかん坊がはっと泣きやみ春の雷

坂みちよ傘のしんまではるのあめ

死も生もかなしいことよしじみ汁

亡くなって形見のようにはるの月

オカリナか山河にひびく春のおと

千ねんとむきあう京ののどかさよ

春ショール天の香久山とおく見て

そよかぜよ天地吹きまぜ花すみれ

淋しさの行きつくところ奈良か春

いにしえの奈良のみやこの鐘か春

いままさに春日大社であることよ

おおさかを出ておおさかは春夕焼

生きるとは目が覚めること百千鳥

なにがある大山があるあさざくら

わらわらと五百羅漢がかげろうぞ

若草か野はらから立ちあがるひと

熊本は阿蘇をはじめののどかさよ

とぶ蝶よ白とも黄ともひかりとも

地球から借りたからだで野に遊ぶ

咲きのこる一つ二つよわすれな草

こえのかずだけのあしたよ卒業歌

そのはてにわらいがでたか卒業生

夜行バスはしりゆく先春あけぼの

スカイツリーふぶく桜の上にこそ

あしもとをさらさらながれちる桜

たくさんのはなびらのなか花見舟

こんなにもそらふぶくとは花見舟

目ひらいて花目つむって花ふぶき

木の下よちってもちってもちる桜

行く日々ののこりの一つさくら餅

夜のそらをくらくともして花の宴

こでまりよ咲き越えている塀の上

ペルシャ猫ふわりと立上がる恋か

都市の空はるばると越え黄砂降る

この町よ春そのままにコーヒー店

母子草はっとこころをとりもどす

ふるさとの山ふるさとの山ざくら

せとないかい島からそらへ春の虹

世をつつむはるゆうやけの安心が

灯台よ瀬戸いっせいにはるのくれ

群燕おおさかへまたとうきょうへ

じてんしゃに鳩に都会にはるの空

たからづか歌劇場じゅう春のうた

指揮棒もはずむオーケストラよ春

バンクシーの絵を飛立った風船よ

一人静咲けばかまくらものがたり

花虻につねにいちりん揺れやまず

ロケットが飛びたった空まさに春

原子力はつでん所ごとかげろうか

ライオンが恍惚といるのどかさよ

コーヒーのかおり千年おぼろの夜

おぼろとはこの世のことか歓楽街

ポーカーのそれぞれの顔どこか春

マネキンのとわの静止よぼたん雪

はるのほしいくせんまんよ天文台

旅客機よおおきなはるの月のなか

むかしからむかしのままか春の月

マンションの春灯やがて星のなか

この星に朝来つづけてさえずりよ

さいげつのひとつひとつよ落ち椿

風になること雲になること遍路杖

顔上げていのちかんじている春よ

飛びまわる春のからすも淋しいか

来る川のながれにかげよのぼり鮎

生きてゆくふる里じゅうの春灯と

家いえよいちおくにんにはるの月

大ぞらのまんなかにある巣箱こそ

耕人にかわりつづける世のなかよ

たがやすか夕日のなかに影ひとつ

豊じょうのゆめひとにぎり春の土

若草よやがてみどりの北アルプス

今日までのじんせいすべて春の月

立ちあがるひと湯柱かはるの風呂

手あわせてみなかげろうか湯神社

ゆうびん夫届けてまわることよ春

ひるがえる黒また白のつばめらよ

つばめの巣ふえゆく声を見守るか

義手にみらい義足にみらい風光る

かけてゆくじゆうな子らよ春日傘

赤く咲いてなんのきざしの沈丁花

平和さよ雨あがるたびしゃぼん玉

吹いている一人一人がしゃぼん玉

ぜっぺきよしぶきをそらに春の滝

釣りびとも大きな海ののどかさよ

えんそくの子を海がよぶ山がよぶ

ぼうぜんと漁夫こつぜんと蜃気楼

かえりくるふねいくつもよ蜃気楼

時計台かげながながとはるのくれ

おもいだすあの灯あの町おぼろ月

あおあおと島あおあおと瀬戸よ春

日に風にまかせる島よわかめ干す

つぎつぎと引いてゆく波春惜しむ

まんげつをひとつ残して春ゆくか

このほしもほしぞらのなか蛙鳴く

ほしぞらよちきゅうひとつが遠蛙



◇ 夏の章 ◇

明あかとあけてゆく世の赤富士か

こころごと押しひらくまど風薫る

家二軒ひびきあうかにふうりんよ

顔あげていた夏ブルーインパルス

葉ざくらのかげよひかりよ写生帳

鯉のぼりあおい山河をおよぐ日よ

こいのぼりのぼりゆくかに川風よ

踏切りがかんかん鳴って夏来るか

白扇よだいじにつかうこのからだ

黄の蕊のうずもれるまで牡丹咲く

さいげつよあともどりなく衣更え

地上へと土もちあげるたけのこか

たけが生え朔太郎忌をたけが生え

傘さしてたたずむ人もかきつばた

あめんぼよながれる雲よ水のうえ

世のなかをあらい流して梅雨の月

街じゅうをわれにかえらす落雷よ

降りしきる音のおもさよ梅雨の家

梅雨晴れてこころの底の水たまり

あきこ忌の明星ひとつかがやくか

咲きみちてあじさいいろの鎌倉か

しみこんで大ぞらいろの濃紫陽花

いち族の写真いちまいほたるの夜

喜をかたり悲をかたりして蛍の夜

邪馬台国ほたる今宵も舞いだすか

星のさいげつ人のさいげつ蛍とぶ

月というこころの涼のおおきさよ

まっ白な蝉つぎつぎと生まれ出て

手に手によ苗束ゆれる田植えどき

なんという空のひろさよ田植あと

日の丸が空にはたはた梅雨明けか

遠くからながめる富士の涼しさよ

蟻いっぴき葉のさきに立つ大自然

大岩に触れた手からもしたたるか

鼻うたは初恋のうた白シャツ干す

そのなかに揺れるみらいよ香水瓶

まいにちがかおりはじめて香水よ

あおぎみてひとのかずだけ夏の月

金魚玉ゆらりといのちひるがえり

おおぞらをとおくきよめて風鈴よ

目つむれば好きな人びと風鈴聴く

子供らの手話もにぎやかソーダ水

空よりもとおくをみつめソーダ水

にぎやかにやがて静かに夏季講座

さっと書く風という字の涼しさよ

ハードル走次つぎと夏こえゆくか

選手立つ空あおあおと飛び込み台

伊予鉄道たかはま線の果てよ夏至

しずかさをひびかせている風鈴よ

せとうちよ島ひとつずづわかば山

せみしぐれ「こころ」一冊机の上

ゆうだちのあと夕映えをゆく船よ


航跡のせとないかいよなつの暮れ


銀天街灯のすずしさのきわまって

じんるいのはんぶん眠るなつの月


北極星夜ごとひとつのすずしさよ


見て億千見つめてひとつなつの星


たかだかと見えるかぎりの山開き

ひろびろと見えるかぎりの海開き

山寺が鳴いているかにせみしぐれ

目つむれば閑のせかいよ蝉のこえ

かっこうのこえ山の声かもしれず

おのみちは会釈の町よせみしぐれ

来る河のながれは絶えず鮎がとぶ

鮎のぼる川のこれまでこれからよ

神木を見あげるひとにみどりさす

はたらいてひと代ひと代の青田風

かじりつくトマトたとえば水の玉

ほおばった人ほほえます明日葉よ

寝ころんでうちゅうに一人夏座敷

ゆびさきでふれてひやりと金魚鉢

飛びたっておもたい尻のこがね虫

教会のひっそりとして薔薇のなか

生きるとはただ生きること炎天か

アイスティー氷からんと静かさよ

ふるさとの大きさほどの神輿行く

日本じゅうおなじじだいを夕涼み

みずからを懐かしみつつ手花火よ

手花火よ一人消えまたひとり消え

この都市もゆめみる都市か夏の月

世も人も変わりかわらず夏まつり

このあたりすでになつぞら熱気球

衛兵がすっくすっくとあるく夏至

きらきらと清濁の世にふんすいよ

さざなみのいくせんまんよ浜日傘

ダイバーのまわりはなやか熱帯魚

ハンモックわかる地球の大きさが

ハンモックほしのせかいは無限大

生き死にの音ひびかせて蝿たたく

聴くまではきこえず坂の蝉しぐれ

東京タワー灯が朝焼にかわるまで

富士の山すえひろがりの涼しさよ

ひとの列そらへそらへと夏の富士

写生紙をはみ出してこそ富士は夏

新幹線富士過ぎてゆくすずしさよ

この世から消えてもきえず京の虹

京ふうりん一代ごとのものがたり

すずしさのまんなかにたつ銀閣か

蓮いちりんいのり代表するように

通天閣おおさかいちのすずしさよ

ゆめを追うらくご家たちよ白扇子

街のおと神輿あらぶりはじめるか

押し寿司よ祝いのことばただ一言

縄文遺跡いちまんねんの蝉しぐれ

いただきに堂おいて山したたるか

生きてきた眼にありありと蟻地獄

大阪は灯でできているすずしさよ

ほしぞらも旅館のうちか河鹿鳴く

死のさきに生見えてくる手花火よ

わか葉してむかしをいまに東大寺

せんねんがきこえくる寺蝉しぐれ

いっぽんのゆびとたわむれ風鈴よ

腹わたにとどろく滝であってこそ

見つづけてとおくなりゆく滝の音

人として梅雨のなかゆく熊野古道

これ以上踏みいらず山ほととぎす

故郷までつらなって山ほととぎす

そのはてに都市いくつもよ夏の河

草笛は吹いてこそ野は晴れてこそ

もくもくと雲もくもくと田草取り

どの田にもひとりふたりよ大夕焼


町じゅうがひとつにけぶる夕立よ

八雲立ついずも八重がき虹ふたえ

スサノオかオオクニヌシか雲の峰

飛びたったてんとうむしは大空か

広島とせかいのそらにふんすいよ

戦争よとおのいてゆくせみしぐれ

うなばらよ壱岐島ひとつ蝉しぐれ

飛びこんでちいさなしぶき太平洋

平およぎ海をひらいてゆくことよ

巻き波よサーファー斜め四十五度

サーファーに妻と子がいて暮の浜

えいえんに明日あるような夏浜よ

とびうおが飛んできらきら一億年

うみがめとともに月あるすな浜よ

かいきょうをまたぐ大橋けさの虹

麦笛よあしたへつづくじんるい史

空ほどにひろがる海よヨットの帆

瀬戸内のうみまっしろに西日さす 

やわらかに日焼を洗いながす手よ

一人一人孤独でアイスコーヒーで

アイスコーヒー氷残してまた街へ

もてなす日おおきくひらく冷蔵庫

盛りつける手ゆびやわらか冷素麺

ひるがおがつぎつぎに咲き海の音

かぶと虫角振りながら生まれるか

からだじゅう光りまみれよ夏の川

ひまわりに凝縮されるいちにちよ

うれしさをざくざくくずすかき氷

あしたとはとわにとおくに大夕焼

麦笛よふるさとわすれわすれられ

いちぞくとそらへだててよ夕涼み

ひとびとがうつくしいのは祭の夜

ふうりんよ時代時代のかぜのおと

柔らかにふれればともる夏の灯よ

かみなりよポポととびだす鳩時計

のれんかけて時ながれだす鰻屋か

蛇口からしたたるみずよ夏のはて

芝に寝てすべてわすれていく涼よ

罌粟の花ひとつひとつがゆめの中

蟻の列すすむいのちのものがたり

ひきがえるどっしり命そのものか

登山杖かつかつと行くおおぞらよ

登山とは空をあるくということか

日の光りさしこんで谷ほととぎす

ケルン積んで山のむこうも青い山

ちんもくがただながながと蟻の列

滝こだま山ふかければふかいほど

玉落ちてなにかが終わる手花火よ

人類のまつえい一人キャンプの火

満天に神話かがやきキャンプの火

うちゅうにもある物語ふうりんよ

アルバムの最後のページやがて秋

飛んでくるいち羽いち羽が大朝焼

飛んでゆくいち羽いち羽が大夕焼



いつも
ご覧いただき
ありがとうございます



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