口語体を基本にした、現代俳句集です。

口語体・現代仮名づかい・現代的切れ字を基本にして詠んだ句をまとめました。

2021年の年間作品集になります。
よろしければご覧になってみてください。


下記の文語体や歴史的仮名づかい・古典的切れ字を使っていないこともご確認ください。

や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・し・き・等々

また口語体で俳句を詠むと俗・稚拙になるのかについても検証など行ってみてください。


*俳句でいう「口語」は現代語の文体、「文語」は平安時代の文法に基づく文体ともされています

*作品はすべて既発表句です
*300句にまとめなおしました




俳句
300句
〜2021年作品集〜

◇ 冬の部 ◇

冬かもめ花咲くように飛びたつか

瀬戸内のひとりひとりが冬かもめ

あしもとにとどく日ざしよ冬木立

日本史を吹き抜けてきた木枯しか

しずけさに又鳴く鶴のしずかさよ

さいげつをながめ見てこそ大枯野

きた山からみなみ山へとふゆの虹

ぱちぱちとたき火のこえよ葛城山

今日までの旅今日からのかえり花

さいげつをただよう鴨か水のうえ

ちらばって小春ひなたの島じまよ

あしあとが散らばって行く雪の門

毛糸編む月日を編んでゆくように

いちりんよへいわ通りのかえり花

風が火を吹きちぎっては磯焚き火

三津浜港冬よりしろくかもめ飛ぶ

寒灯よはたらくひとのつくえの上

ロボットがはたらきだした街よ雪

五重の塔れきしの果てのかえり花

野仏は野になるまでよ日なたぼこ

たかぞらよ白落ちてくるふゆの滝

ホットティーホットコーヒー婚話

未来にも過去にも僧よ奈良しぐれ

ぜん身にゆきわたらせて冬至風呂

とうきょうよ池あるところ浮寝鳥

安心をさずかりつつよ日なたぼこ

村長のかげとひかりの日なたぼこ

はつゆきよ筑波は筑波富士は富士

けさの雪ひとひらずつが幸になれ

ふゆぼしのいくせんまんよ天文台

舞い舞って夜かぐらは子々孫々と

ぜんいんは僧にならずよ京しぐれ

焼芋屋うしろすがたがあるだけか

あしあとよのぼったひとに雪の山

さまざまなけはいのなかよ浮寝鳥

風邪生むか風邪ほろぼすか試験管

こころいま船こえてゆく冬かもめ

フェリー行く島ひとつずつ雪景色

飛びたってむすうのかげよ浜千鳥

かがやいてどれもしんじつ冬の星

ただの灯か信仰の灯かクリスマス

屋根屋根に鐘の音ひとびとに聖夜

雨やんで足あとまみれラグビー場

手のかずのいっぽん締めよ忘年会

足あとのちいさくとおく雪野行く

さっそくに空を晴らして門松立つ

灯にれきし国にれきしよ除夜の鐘

一人一人世にあらわれて初日の出

また一人鳩羽ばたかすはつもうで

めでたさよあかい日の出の雑煮椀

ロボットがしゃべりだした日春隣

AIが見つめている世雪降りだす

子らのうたアレクサのうた春間近

鏡びらき年をひらくということか

いまの世を嘆きだすとき木の葉髪

ドローンはきらりともせず冬の空

ふくしまよ灯をけしてより雪の底

ゆき解けの雫生きよということか

地の底のおととどろかす除雪車か

ふねの灯がとうだいの灯が大寒よ

だんだんとへいわになる世雪達磨

大人みなうしろすがたよふゆの坂

ほっかいどう零下四度の冬ぎんが

北方領土雪ふりつづきふりやまず

せつぶんのまめのちからか百一歳

焚くひとも落葉も地球しずけさよ



◇ 春の部 ◇

春立つかひがしに筑波にしに富士

かもめとぶ沖にまで春およんだか

せんせいにせんせいがいて梅の花

はるの海初心がしんとあるだけよ

梅いちりんにりんさんりん天満宮

鐘ついて余寒のそらをふるわすか

ふるさとがみえてくるのは春炬燵

イヤホンにぽんと触れれば春の歌

指紋認証春のとびらをあける手よ

自動運転木の芽の道をまっすぐに

大和路のむかしをいまをはるの旅

輪郭がだんだん富士よ春あけぼの

末広がりどこから見ても春の富士

山小屋はやまのにおいの雪解けよ

変わらずに変わりつづけよ春山河

ちんもくでかたりつづける嶺よ春

北を見ればどこまでも北鳥かえる

小ながれがもつれあってよ春の川

さんじゅうは咲きでてくるか庭椿

手品師がハト出すように春めくか

たね蒔きよ日あたっている金峰山

凧ひとつぜっちょうにある夕空よ

無になってながめる花よ花のなか

花ということば花へのみちしるべ

にぎやかに来て沈黙のやまざくら

ほんとうの桜がみえてふぶくなか

ふるさとの山ふるさとの山ざくら

八重桜世がながながとあかるいぞ

和歌よふと生きているかに西行忌

まっしろな蝶にも影のしずかさよ

あたらしいさいげつをまた耕すか

きょうまでの幸が不幸がはるの雪

マネキンのとわの静止よぼたん雪

この町よ春そのままにコーヒー店

うたう子のうたわない子の卒業よ

卒業後やくそくだけがうつくしく

ふるさとよひとりふたりの入社式

いままさに春日大社であることよ

おおさかを出ておおさかは春夕焼

春ゆうやけ三人ほどは見ているか

地球史よ日ざしに透かすさくら貝

僧にぼんのう衆生にぼんのう花祭

総本山に喝がひびいてのどかさよ

ちゃるめる草戦後終われば戦前か

赤く咲いてなんのきざしの沈丁花

春雨よきのうは待たせ今日は待ち

地下街のかいだんのぼりきって春

バス停がしずまるたびよ落つばき

さいげつのひとつひとつよ落ち椿

この坂よ一重ばかりの落ちつばき

晴ればれと比良があるから耕すか

花すみれ雲ぐんぐんととおくなれ

はるのうみいのち創造してしずか

ほしぼしよ夜ごといのちを鳴く蛙

一年の日ざしがしみたたんぽぽか

大宇宙ちいさく見ればたんぽぽよ

義手にみらい義足にみらい風光る

路じょうでも屋じょうでもよ春茜

春惜しむ路地奥に住むひととして

へいわの世ふとあかるくて草の餅

はるの船河はいそがずとどまらず

そうぞうがそのまま都市に春の月

おもいだすあの灯あの町おぼろ月

都市という都市星という星おぼろ

草ばなは摘まれるままにはるの旅

熊本は阿蘇をはじめののどかさよ

一人静しんとなにかをものがたり

ぼうぜんと漁夫こつぜんと蜃気楼

坂みちよ傘のしんまではるのあめ

じてんしゃに鳩に都会にはるの空

少年という春雲よジャングルジム

父子草ゆうぐれどきがあかるいぞ

かえりくるふねいくつもよ蜃気楼

釣りびとも大きな海ののどかさよ

あおあおと島あおあおと瀬戸よ春

瀬戸をゆく船いろいろの長閑さよ

春惜しむ瀬戸内じゅうの島じまが

このほしもほしぞらのなか蛙鳴く

ほしぞらよちきゅうひとつが遠蛙



◇ 夏の部 ◇

明あかとあけてゆく世の赤富士か

家二軒ひびきあうかにふうりんよ

白扇よだいじにつかうこのからだ

帆はすべて初夏のきらめき太平洋

鯉のぼりあおい山河をおよぐ日よ

たけのこのあじにいきおい筑前煮

かきつばたあやめあじさい流水園

そこらじゅう水鏡してかきつばた

邪馬台国ほたる今宵も舞いだすか

喜をかたり悲をかたりして蛍の夜

月というこころの涼のおおきさよ

ほしぞらも旅館のうちか河鹿鳴く

渋滞かどこまでもどこまでも梅雨

まいにちがかおりはじめる香水よ

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ

おのみちは会釈の町よせみしぐれ

町じゅうがひとつにけぶる夕立よ

せとうちよ島ひとつずづわかば山

伊予鉄道たかはま線の果てよ夏至

ひとりずつちがう明日待ち夏休み

かぶと虫角振りながら生まれるか

たかだかと見えるかぎりの山開き

ひろびろと見えるかぎりの海開き

巻き波よサーファー斜め四十五度

サーファーに妻と子がいて暮の浜

二階には二階の暮らしせみしぐれ

目つむれば閑のせかいよ蝉のこえ

部屋じゅうを庭じゅうを掃き夏館

きらきらと清濁の世にふんすいよ

その声をやしなう山よほととぎす

腹わたにとどろく滝であってこそ

そのおくへまたそのおくへ夏暖簾

飛びたったてんとうむしは大空か

京ふうりん一代ごとのものがたり

わか葉してむかしをいまに東大寺

甘酒よたまわりもののへいわの世

むこうにはあおぞらだけよ扇風機

押し寿司よ祝いのことばただ一言

あきこ忌の明星ひとつかがやくか

銀天街灯のすずしさのきわまって

ふるさとの夜があかるくて月見草

八雲立ついずも八重がき虹ふたえ

アイスティー氷からんと静かさよ

ちんもくがただながながと蟻の列

生きてきた眼にありありと蟻地獄

この星よがらがらくずれゆく氷河

ゆうべんは銀ちんもくは金冷し酒

もくもくと雲もくもくと田草取り

街のおと神輿あらぶりはじめるか

おもいでのなかでひとつよ夏祭り

玉落ちてなにかが終わる手花火よ

交番をけぶらせているゆうだちか

かみなりよポポととびだす鳩時計

跳んではくずれ跳んではくずれ蟇

芝に寝てすべてわすれていく涼よ

なにもかも大ゆうやけに果てて島

草笛を吹くひととしてしずかさよ

火の歴史明るく暗くキャンプの夜

うちゅうにもある物語ふうりんよ

アルバムの最後のページやがて秋



◇ 秋の部 ◇

スカイツリー真ん中に置き流れ星

秋風鈴かぜになりつつあることよ

秋風鈴路地には路地のものがたり

都市たかく灯ともってこそ流星群

遠として雲いくつもよあきのくれ

ことごとくいっぽん立ちよ竹の春

原爆ドームその日を語り続けるか

ひとことのおもさに夜の団扇置く

ひとにみちじぶんにみちよ墓参り

おすそわけしてもしてもよ大西瓜

見ながらに見られているか盆の月

いつの世もまえへまえへと阿波踊

盆踊りいまの世でまたのちの世で

そのしたにかおかおかおよ大花火

顔照らす花火きえてはまたひらく

千々の灯がとおくひとつに流灯よ

虫鳴いて生死の果てのかぜのおと

すずむしか伸びほうだいの草に風

明けぞらよ鈴虫がふるすずのおと

このいえのいくとしつきが柿の秋

図書館のさいげつ黄葉してゆくか

わたりどり明けがたの空暮れの空

とおくなる街をわたってゆく鳥が

静かさのはじめの夜よたなばた竹

再会よだまっていてもほしづき夜

灯はどれも夜明けのきざし天の川

曼珠沙華朝日にいろをとりもどす

釈迦の弟子るいるいとして鐘の秋

たびびともすすきの穂わた草千里

松山よどの句碑からもあきのこえ

おおぞらが散りはじめたか桐一葉

出会いとはわかれのことよ秋遍路

ぐちの屋台わらいの屋台ぬくめ酒

みずからをなつかしみつつ今年酒

秋光のひとつひとつよくだもの籠

四万十川ながれのままに水澄むか

菊いちりん今へとつづく香りこそ

菊の香よふる里よりもなつかしく

赤とんぼ時代とどまることしらず

もみじしてもみじのなかよ吉野山

コスモスもあるきたそうに散歩道

さしてより秋蝶の野よ日のひかり

ゆうぐれてどの道からも秋のこえ

飛鳥寺そのむかしからあきのくれ

秋ゆうやけ遷都ののちの鐘のおと

城あとよ風にただようあかとんぼ

ゆらゆらとむねのあたりよ吾亦紅

奏上のこえに夜明けてあきまつり

町じゅうが喜怒哀楽よあきまつり

宮神輿ほうじょうの秋そのものか

黙として自分のなかのあきのこえ

新幹線なごやおおさかあまのがわ

千光寺千々のひかりのつゆむすぶ

生き死によ消えてはむすぶ露の玉

いくすじも陽がさしてより台風後

そのおくにしろい日ひとつ秋夕焼

からすらのこえもあかあか秋夕焼

いちにちの余情のなかよ赤とんぼ

来るひとも行くひとも影秋の暮れ

古じんらのおもいのこしの名月よ

十五夜よひかりながれるすみだ川

いちねんを忘れはじめの十六夜よ

屋根屋根に日ざしがしみて峡の秋

曼珠沙華峽のゆうぞらそのものが

飛騨のバス霧にあらわれ霧にきえ

甲州のそらずっしりとぶどう狩り

精霊が羽ばたくようにつゆくさよ

縄文のむかしから富士あきうらら

きつつきよ山々は日々あたらしく

夕風よ吹きよせてくるすすきはら

ひびきつつしずまるそらよ滝の秋

さいげつがさらさらさらと新米よ

おむすびよおおぞらだいち今年米

非力さにふるえながらよ胡桃割る

永代橋ゆくひとびとのつゆけさよ

それぞれの絵にものがたり美術展

秋の蝶ときどきすがた失くし飛ぶ

東京はとうきょうのまま赤とんぼ

東京タワー明けがたの月暮れの月

工場をうつくしくしてあかとんぼ

えんとつよあがるけむりも秋の空

灯の家よあかるくくらく地虫鳴く

航海よ日はのぼりつつほしづき夜

羽田発あまのがわ行き飛びたつか

バックパッカーゆく国々の秋夕焼

そのしたは旅びとばかりいわし雲

うなばらを船ひとつゆく露けさよ

露ざむよからすが悼むからすの死

自転車よみちどこまでも曼珠沙華

踏切りのおともしずかか秋の暮れ

道わかれ人わかれてよあきのくれ

ひがしから来るものに夜よ天の川

みの虫のちんもく星のちんもくよ

天のがわ果てには天のうなばらか

明けるまで銀河の島よなみのおと


2021年
1月1日〜12月31日


いつも
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ありがとうございます


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