口語体を基本にした、現代俳句集です。

口語体・現代仮名づかい・現代的切れ字を基本にして詠んだ句を集めました。

2020年の年間作品集になります。
よろしければご覧になってみてください。


下記の文語体や歴史的仮名づかい・古典的切れ字を使っていないこともご確認ください。

や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・し・き・等々

また口語体で俳句を詠むと稚拙になるのかについても検証など行ってみてください。


*俳句でいう「口語」は現代語の文体、「文語」は平安時代の文法に基づく文体ともされています。

※作品はすべて既発表句です




俳句
200句
〜2020年作品集〜

◇ 冬の句 ◇

嶺に雪死ぬも生きるも身をもって

家いえのこえ開け透けに小春日よ

マンションも建って日差の十一月

からからと鳴りだす絵馬よ神の旅

ゆく道のかなたまで未知落葉踏む

都市ひとつばくぜんとして初時雨

火のようにひろがる街の大風邪よ

だれも行くマスクの白を盾として

くしゃみして大空すこし遠のくか

行くみちのままにそだてよ七五三

平和通りいまは静かに木の葉降れ

降る雪よ背中をむけたほうが過去

山みちのあしあと凍りついていた

ぎょうれつよ東寺が見える冬景色

五重の塔しぐれていても静かさよ

ホットワインむかしは昔遠くなれ

あかるさよはるかにほろぶ冬の星

豪華客船都市そのものよ冬かもめ

じんるいにかんけいのなく鯨跳ぶ

さいごにはゆうやけてこそ十一月

噛みあててさびしい芯よ冬りんご

とうきょうが顔あげている初雪よ

しあわせな時間は湯気に鍋焼き屋

熱燗よまさにだいとうりょう選挙

その夜にむかって聖樹かがやくか

顔あげて地きゅうもろとも冬銀河

プロキオンカペラシリウス庭焚火

釣鐘は打つもの雪はたまわるもの

冬耕よこつこつとただこつこつと

ふるさとよ雲すぎてゆく松手入れ

さいげつよ押し黙るとき年の暮れ

明けをまつ列ながながと除夜の鐘

しんねんをおおきくひらく朝刊よ

踏みひらく一歩いっぽよ初もうで

かがみ餅さかのぼること神代まで

初富士と一つになったこころこそ

パスポートひとりのこらず初空へ

去年今年へだてて暖簾いちまいよ

あるくたびとおざかるのが一月よ

だれひとりたどりつけずよ寒夕焼

とおい島寒ゆうやけとともに消え

詩人とは寒暮のあかりそのものか

ボイジャーは今どのあたり冬銀河

ホットティー戦争へいわそして今

坊ちゃん団子マドンナ団子冬日向

ぼうぜんとげんじつがある雪国よ

逢いにゆくいっぽんのみち雪化粧

乗ってゆけ乗ったくるまの隙間風

ロボットがひょこひょこ歩く春隣

ヘッドフォン雪舞う空の静かさよ



◇ 秋の句 ◇

さまざまななやみのこたえ朝顔よ

笛吹いて天にとどくかあきまつり

月を見て三日こころのしずかさよ

はるばると原爆の日のかねのおと

そのおくにナガサキがある大夕焼

あれからのこれからの鐘へいわ祭

ことごとくかえってこない雲よ秋

京よりも奈良のふかさよあきの色

たましいが呼びあってこそ迎え盆

たなばたよ恋でさかえてきた地球

既視感のなかにたたずみ赤とんぼ

生きてこそかずかぎりない草の花

つぎの代つぎの代へとばった飛ぶ

まんてんの星きよめるか虫のこえ

とうきょうもひと粒の灯よ星月夜

りんごひとつ置かれ現代アート展

なが生きの幸よ不幸よけいろう日

あかとんぼダムの放流とどろくか

露踏んで西へひがしへじんるい史

日本のゆうぐれいろに秋刀魚焼く

果てるのは一日果てないのは秋思

大宇宙をものおもいして灯の秋よ

フライパン火にかけどおし豊の秋

見つめればだんだん観えて名月よ

また一人あかるみに出て十五夜よ

横断歩道のまんなかあたり秋の風

ちんもくをもって真向かう台風よ

旅びとが吹き行くかぎり草絮とぶ

さいげつはひとすじのみち芒手に

ハロウィンよ大地に感謝日に感謝

秋すずめとんとんとんと跳ねて空

船に風まったくもってさわやかよ

水澄むということとおい湖国まで

日本百景どこにいっても澄む秋か

ほんもののひびきか奈良の秋の鐘

採るほどに恐ろしいのがきのこ山

なにもかもはるばるとして柿の秋

いちまいの大ガラスまど鳥わたる

たくさんの船たくさんの秋の暮れ

百ねんは生きていられず草絮吹く

来世にはらい世のなやみ曼珠沙華

じぶんへのいのりしすかに星月夜

住む街が問いかけてくる秋の灯よ

ゴスペルにブルースレゲエ長い夜

星あかりたたずむ橋の名もしらず

風おとのすき間すき間よのこる虫

待たされて月スクランブル交差点

中年の笑顔くしゃくしゃぬくめ酒

むくどりよ建ったばかりの一軒家

ほしぼしがながれてここに天球儀

ぼうえんきょう木星土星あまの河

はるかさよ未知がかがやく天の川

夜顔よかたりつがないものがたり



◇ 夏の句 ◇

顔あげていた夏ブルーインパルス

野にふたりだまっていても風薫る

そのはてに都市いくつもよ夏の河

ビルひとつそびえ立たせて新緑よ

ひるがおがつぎつぎに咲き海の音

通天閣おおさかいちのすずしさよ

大阪は灯でできているすずしさよ

ゆめを追うらくご家たちよ白扇子

日本じゅうおなじじだいを夕涼み

あおぎみてひとのかずだけ夏の月

柔らかにふれればともる夏の灯よ

降りしきる音のおもさよ梅雨の家

街じゅうをわれにかえらす落雷よ

世のなかをあらい流して梅雨の月

しずかさをひびかせている風鈴よ

この世から消えてもきえず京の虹

聴くまではきこえず坂の蝉しぐれ

故郷までつらなって山ほととぎす

草笛は吹いてこそ野は晴れてこそ

麦笛よあしたへつづくじんるい史

蓮いちりんいのり代表するように

とびうおが飛んできらきら一億年

うなばらよ壱岐島ひとつ蝉しぐれ

平およぎ海をひらいてゆくことよ

富士の山すえひろがりの涼しさよ

夜釣りして月あかりまた星あかり

東京タワー灯が朝焼にかわるまで

はたらいてひと代ひと代の青田風

地の声よ刈ってもかっても夏の草

これ以上踏みいらず山ほととぎす

生きるとはただ生きること炎天か

あしたとはとわにとおくに大夕焼

盛りつける手ゆびやわらか冷素麺
 
手花火よ一人きえまたひとり消え

えいえんに明日あるような夏浜よ

関東よなんのいかりのかみなり雲

ハードル走次つぎと夏こえゆくか

汗一人責められもせず責めもせず

都市のゆたかさ村のゆたかさ夏祭

ひとびとがうつくしいのは祭の夜

とおいとは涼しいことよひとつ星

アイスコーヒー氷残してまた街へ

灯ともして夜を透きとおる熱帯魚

いのるひと虹でゆるしてきた地球

ハンモックわかる地球の大きさが
 
縄文遺跡いちまんねんの蝉しぐれ

蟻の列すすむいのちのものがたり

ケルン積んで山のむこうも青い山

飛んでゆくいち羽いち羽が大夕焼

飛んでくるいち羽いち羽が大朝焼



◇ 春の句 ◇

つぎつぎとそら染めてゆく紅梅か

オカリナか山河にひびく春のおと

地球から借りたからだで野に遊ぶ

風になること雲になること遍路杖

飾り雛流行りやまいもなんのその

今日までのじんせいすべて春の月

木々の芽のひとしずくずつ雪解よ

どのひともひかりのなかの雪解よ

そのはてにわらいがでたか卒業生

くっきりと富士がみえた日四月尽

ねこの子と鏡のなかのねこの子と

じんるいのゆめのはじめの畑打よ

一つ一つちいさな地球木の芽吹く

きたぐによ木の芽はひとつずつ光

バンクシーの絵を飛立った風船よ

千ねんとむきあう京ののどかさよ

春ショール天の香久山とおく見て

たからづか歌劇場じゅう春のうた

いにしえの奈良のみやこの鐘か春

淋しさの行きつくところ奈良か春

マンションの春灯やがて星のなか

まいにちが花のとき花ふぶくとき

しずかさよまわりにぎわう花の宴

顔上げていのちかんじている春よ

若草か野はらから立ちあがるひと

耕人よおおむかしからそらのした

豊じょうのゆめひとにぎり春の土

耕人にかわりつづける世のなかよ

群燕おおさかへまたとうきょうへ

ゆうびん夫届けてまわることよ春

指揮棒もはずむオーケストラよ春

世をつつむはるゆうやけの安心が

ポーカーのそれぞれの顔どこか春

コーヒーのかおり千年おぼろの夜

おぼろとはこの世のことか歓楽街

生きてゆくふる里じゅうの春灯と

立ちあがるひと湯柱かはるの風呂

春星よかなしいものはじんるい史

歳月を忘れながらよたんぽぽ吹く

原子力はつでん所ごとかげろうか

ロケットが飛びたった空まさに春

手あわせてみなかげろうよ湯神社

吹いている一人一人がしゃぼん玉

ライオンが恍惚といるのどかさよ

夜釣りして心いつしか春あかつき

むこうに富士むこうに筑波草の餅

あなたとのけんかもいずれ春炬燵


2020年
年間作品集
〜終〜


いつも
ご覧いただき
ありがとうございます



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