ソウル市庁 謎の地下空間 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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    こんにちは。6月に入ったばかりというのにもう真夏みたいな気候が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 
   ソウル市庁(서울시청)には行かれたことがあるでしょうか。南大門市場(남대문시장)、明洞(명동)にも近い、高層ビルがソウル市庁です。地下鉄1号線ではソウル駅(서울역)の次の駅が市庁(시청)です。
 
   今回ご紹介するのは、ソウル市庁地下にある市民のための空間 市民庁とソウル専門書店、そしてその奥にある信じられないようなものです。信じられないようなものが何か、それはあとのお楽しみです。
 
 
ソウル市民聴
 
 
   ソウル市庁といえば地下に市民聴(시민청)という市民のために開かれた空間があります。市民の皆さんがゆっくりできる広々とした空間があり、個人的にはおススメのポイントです。
 
 

ソウル市庁地下 市民庁入口

 

広々とした市民聴内部

 

 

ソウル書房

 

 またここにはソウル書房(서울책방)という書店があります。ここではソウル市が刊行した書籍を自由に手にとって購入できます。

 

 

  

ソウル書房 ー 明るい店内で落ち着きます

 

 

 お役所の刊行書というというと、何とか白書や統計類かと思うかも知れません。しかしここには市内の散策ガイドや歴史書、一般向けの読み物など多彩な書籍を揃えております。私のお気に入りは、『ソウル2 千年史』(서울2천년사)40巻のセットです。時代別、分野別の構成で、一冊1万ウォン。とってもカラフルな装丁で気に入った巻だけでも購入できます。ソウル訪問の度に一冊ずつ買うようにしてます。

 

『ソウル2千年史』1総説 ソウル入門にぴったり

 

 

 また『ソウルの発掘現場』(서울의 발굴현장)などという、最新の発掘成果を紹介した本などもあります。

 

『ソウルの発掘現場』

 

 

 またソウルの町の歴史を学びながら散策できるなかなか素敵なガイドブックも出ています。

 

『ソウル歴史踏査記1』

 

 

 

 

ソウル市庁地下 もうひとつの顔

 

 そういう市民に開かれた雰囲気の明るいソウル市庁の地下ですが、もうひとつ知られざる想像を絶する一面があるのをご存じでしょうか。実は地下の一番奥には武器製造工場があるのです。こんなことを言うと、信じられない、そんなところで武器つくってるなんて、冗談じゃない、こわい、物騒じゃないか、そう思うでしょう。冗談で言ってるのではありません、本当です。

 

 本当の話ですが、でも怖がる必要はありません。この場所の朝鮮時代の話です。

 

 ソウル市庁舎のあるこの場所は朝鮮時代後期には軍器寺(군기시)という武器をつくる工場だったのです。

 

 それがソウル市庁舎を整備するときに大々的に発掘調査が行われ、近代にいたるまでの多様な遺構が発見されたのです。

 

軍器寺遺跡展示室入口

 

 

 今はそれがソウル市庁の地下で復元公開されているのです。もちろん入るのに予約などは必要ありませんし、ボディーチェックもありません。ちょうどソウル書房の奥に展示室の入り口があります。

 

 

入口横 導入部

 

 

 入口の右側には、当時の様子をわかりやすく復元した模型などで、あらかじめここがどういう遺跡なのか教えてくれます。

 

 

 

概略の説明番です
 
 朝鮮時代から近代に至る遺構が検出され。清渓川(청계청)の護岸や建物跡はもちろん、磁器、銅銭、瓦や多量の武器類が出土しています。

 

 

清渓川護岸石築

 

 市民や観光客が見学しやすいように、建物の周囲に専用通路をつくり、そこから巡回しながら見学できるようになっています。

 

建物跡

 

 建物跡なども当時の石で造られた基礎の様子が生々しい形で残されています。

 

武器類

 

 ここでつくられていた武器なども多量に出土し、まさに軍器寺であったことを証明しています。

 

 

 

土層のはぎ取り展示
 
 
 土層のはぎとり展示もあります。考古学の調査において土層の堆積の状況は大事なもので、ここからその遺跡の時間的経緯を読み取ることができます。これを見るといかにも遺跡の展示館の雰囲気がします。ソウル観光に行かれた折には、こんな時間旅行を楽しむのはいかがでしょうか。
 
 
 
おまけに
 
 軍器寺(군기시)などという名前を見て、お寺? かと疑問を持った人がいるかも知れません。説明するとこの場合の寺は仏様をまつった所とは関係がありません。普通韓国語の世界では漢字一つに音ひとつが原則です。しかし寺という漢字はというふたつの音のある珍しい漢字で、どちらをとるかによって意味も違うのです。仏国寺(불국사)通度寺(통도사)のように仏教寺院をあらわす場合は사(サ)という音になりますが、一方で朝鮮時代の官庁名につく場合などには시(シ)と読まれます。内資寺(내자시)軍器寺(군기시)などのように。憶えているとちょっと得をする韓国語豆知識でした。