異郷の地で亡くなった青年詩人 尹東柱の詩碑 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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    みなさんこんにちは。いかがお過ごしですか。

    前回は韓国朝鮮専門の美術館「高麗美術館」を紹介させていただきましたが、いかがでしたか。

「高麗美術館」は小さいながらも特色のある美術館で、いわば現代の韓流ブームの根本を抑えている存在です。皆さんにももっとみてほしいところのひとつです。

 

   さて、今回は高麗美術館の南約3km地点にある、赤レンガ建物で有名な大学に行きたいと思います。一体どの大学のことだと思いますか。

 

    そうです。大正解まさに同志社大学のことです。今度はよくわかりましたね。でも同志社に何しに行くと思いますか。

 

    えっ、また庶民的な居酒屋でも探しに行くんだろうって、それも大好きですが、今回はそんなことじゃありませんよ。

 

 

 

尹東柱

 

    韓国の有名詩人の詩碑を見に行くんです。ご存知だと思いますが、その人の名は東柱。どんな人だか知ってますか。名前は聞いたことがあるけれど、中身は知らないって、韓国現代詩作家の先駆者みたいな人です。今でも韓国では非常に尊敬を集め、詩集が愛読されている詩人のひとりです。日本でいえば石川啄木や宮沢賢治みたいと言えばいいのかも知れません。

 

  でもそんな人の詩碑がなぜ京都にあると思いますか。彼の生い立ちから謎解きをしましょう。

    彼は1917年満州で生まれ、延禧専門学校(現 延世大学校)で朝鮮語を学んだ後、来日します。1941年に立教大学に留学後、同年秋に同志社大学に編入、英文学を学びますが、同志社在学中に治安維持法違反で従兄弟の宋夢奎とともに逮捕されました。彼は日本でも朝鮮語で詩を書いたり、独立に関する運動が当局ににらまれたようです。1944年、懲役2年の判決を受けますが、解放を目前にした1945年2月16日、服役中の福岡刑務所で獄死しました(享年27歳)。死因はよくわかっていないようです。

 

 

同志社大学にある尹東柱詩碑

 

 

    彼は「空と風と星と詩」(하늘과 바람과 별과 시)などの今に伝わる格調の高い詩集を残しています。日本で彼の名前が知られるようになったのは、1986年に茨木のり子氏が「ハングルへの旅」で彼のことを紹介し、高校教科書にも取り上げられてからのようです。

 

 

 

詩碑の建立

 

    さらには大学関係者を中心に、幅広い在日コリアンや日本人の熱意により、没後50年の1995年に同志社大学キャンパス内に詩碑が建立されました。詩碑には彼の代表的な詩である序詩が原文と日本語訳で刻まれています。異郷の地で倒れ、非業の死を遂げた青年詩人を悼むため、国内外から数多くの人たちが日々訪れるそうです。私が詩碑を訪問したときにも、韓国から来られた方が詩碑を訪れていました。

 

    また尹東柱詩碑の横には、同じく同志社大学への留学経験があり、韓国現代詩の父と呼ばれる鄭芝溶の詩碑もあります。韓国現代文学を考える上ではずせないところになっています。

 

 

韓国現代詩の父  鄭芝溶詩碑

 

左 尹東柱詩碑          右  鄭芝溶詩碑

 

 さらに毎年、尹東柱が獄死した2月16日の直前の土曜日には、詩碑への献花式が行われているそうです。次の機会には、異郷の地で心ならずも命を落とした青年詩人を悼むために参加したいと思います。東アジア恒久平和への祈りをこめて。

 

 

追記;京都関係の記事には以下のものもあります。ご覧いただければ幸いです。

 

奇想天外、朝鮮外交の舞台裏と慈照院 ーアジア再発見 京都(その5)ー

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12463348652.html

 

600年前の日本文化ニューウエーブ 京都五山・相国寺と足利義満 ーアジア再発見 京都(その4)ー

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12462201475.html

 

尹東柱 序詩について ーアジア再発見 京都(その3)

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12460875369.html

 

 

韓国・朝鮮専門の美術館 高麗美術館に寄せて ーアジア再発見 京都(その1)ー

 

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12459894168.html