安井仲治 僕の大切な写真② | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

兵庫県立美術館で見た「安井仲治 僕の大切な写真」の続きです。以下の文章は展示パネルから引用しました。

 

 

  Ⅱ 1930s-1 都市への眼差し

 

昭和2年(1927)、銀鈴社を立ち上げ精力的に作品を発表していく中で、安井は路傍の人々や風景のみならず労働者や工場などにも主題の幅を広げていった。

 

 

昭和5年(1930)に浪華写真倶楽部の兄弟クラブとして発足した丹平たんぺい写真倶楽部にも翌年から指導的立場で参加し、アマチュア写真家として関西写壇の中心的存在となっていく。

 

 

昭和6年(1931)、ドイツからもたらされた展覧会が日本の写真界に衝撃を与えた。東京、大阪を巡回した「独逸ドイツ国際移動写真展」である。

 

 

この展覧会は、昭和4年(1929)にドイツで開かれた「映画と写真」展の写真部門を日本に巡回させたものである。マン・レイやモホイ=ナジなどの作家による前衛的な写真作品が展覧され、大きな話題を呼んだ。

 

 

この写真展が契機となり、日本、とりわけ関西の写真界では、それまでの「芸術写真」からいわゆる「新興写真」と呼ばれるものに表現の主潮が移行していく。

 

 

後者は、極端な角度のアングルによる撮影、フォトグラムやフォトモンタージュなどの新技法を用いて、カメラやレンズの機械的な視覚を生かし、写真のみがなし得る表現を目指す動向である。

 

 

このように1920年代末から30年代前半頃は、日本でモダニズム写真が隆盛し、他の同時代の写真家と同様に、安井も新興写真の開花に多大な影響を受け、新技法を取り入れた実験的作品に取り組んでいる。

 

 

しかしその一方で、すでに時代遅れとなりつつあったブロムオイル印画への強い拘りも見せているのが興味深い。新興写真を単純に模倣するのではなく、作画のための一手段として消化し、安井は独自の写真表現を追究していった。

 

 

ここで取り上げる作品は、安井にとってそのような換骨奪胎かんこつだったい(他人の表現や着想などをうまく取り入れて自分のものを作り出すこと)の時期の作例といえよう。

 

 

路傍の人々や風景

 

《牛Ver.》1929年頃

 

《草》1929年頃

 

《花》1929~32年

 

《静物》1929年

 

《平野町》1929年

 

《馬場町》1929年

 

《都会風景》1930年

 

 

労働者や工場

 

《海港風景》1930年

 

《風景》1932年

 

《工事場》1930~31年

 

《工作場ニテ》1931年

 

《建築物逆光線》1931~32年

 

 

「街頭断片」三部作

 

《水》1931~32年

路上の撒水という何気ない光景に取材しつつ、水の飛沫と煌めきをエネルギッシュに捉えている。

 

《相剋》1931~32年

5年程前、神戸の街を歩いている時に撮った写真。赤レンガの塀に貼られたポスターは、破り捨てられたり上へ滅茶貼りされたり、互いに剋し合っている。

 

《街頭断片》1932年

 

 

メーデー

 

安井は昭和6年(1931)5月1日に大阪で開催されたメーデーを撮影した。中之島公園に集まり、旗を翻し、歌声を響かせながら行進するデモ隊が警官隊と衝突するまでを追ったことが、現存するベスト版のネガ約40枚から分かる。

 

《警官》1930年

 

《メーデーの写真》1931年

報道写真(ルポタージュ)を先取りする試み。

 

《旗》1931年

ブレの効果を生かした。

 

《歌》1931年

画像を反転し大胆なトリミングで画面から不要な要素を省いたブロムオイル印画。

 

《検束》1931年

 

《凝視》1931年

複数のイメージを合成した。

 

こちらがネガコンタクトプリント。上段がオリジナルネガ、中段が使用部分図解、下段が合成前の4枚の画像。

 

 

《波と群衆》1931年

複数のイメージを合成した。

 

 

半静物

 

安井は、物と物を組み合わせて、あるいは秩序ならざる秩序を示す「もの」を見つけ出し撮影することで、シュルレアリスムの手法「デペイズマン(異化作用)」に通じる効果を生み出していった。

 

《斧と鎌》1931年

その場にあった道具を何気なく動かしているうちに興が乗って撮影した。

 

《道具(1)》1932~39年

 

《光の線条》1933年

 

《影》1933~37年

 

《自像》1933年

 

《即興》1935年

 

《熱帯魚・モンタージュ》1933~37年

 

《女とグラス》1938年頃

 

《肌》1936年

 

《蛸》1933年頃

 

《魚》1932年頃

 

《氷牙》1934年

 

《金網》1930年代

 

 

写真もいろいろテクニックがあるんですね。一度合成の過程を映像で見てみたいなと思いました。

 

 

つづく