京セラ美術館で見た「村上隆もののけ京都」の続きです。
第4章では、曾我蕭白や狩野山雪といったいわゆる「奇想」の絵師や、尾形光琳、俵屋宗達といった京都を中心に活躍した絵師に挑んだ作品を見ました。
4 風神雷神ワンダーランド
風神雷神図
村上隆の《風神図》《雷神図》は、かつて琳派の絵師によって描かれた勇ましく筋骨隆々の風神雷神ではなく、21世紀の現代日本の畏風を反映するかのように、可愛く、ゆるい感じが特徴的です。
《風神図》2023~24年
《雷神図》2023~24年
《ぽよよん風神図》2024年
《むにょにょん雷神図》2024年
唐獅子
《ライオンと村上隆(2023~24)》は、獅子が石橋に座っていて、そこに水が落ちてきて、唐獅子の額に牡丹があるという、縁起を担いだ作品です。
村上の言い訳によると、この絵は旧慈門院襖絵《天台岳中石橋図》という唐獅子図を模倣した自身の作品《彭城百川の獅子の図(2009)》がもとになっているそうです。
花
《金色の空の夏のお花畑(2023~24)》は、2002年に初めて発表された入道雲を背景に、光琳の《孔雀立葵図屏風》の立葵を思わせるお花が横長の画面いっぱいに広がるシリーズの最新作です。
《尾形光琳の花》2023~24年
《かごに入った花束》2023~24年
雲竜赤変図
《雲竜赤変図》は、村上の日本の伝統美術の本格的な掘り下げの契機となった美術史家・辻惟雄(1932~)との『芸術新潮』誌の連載「ニッポン絵合せ」から生まれました。
若い頃から辻の著書『奇想の系譜』に啓発され、この系譜が漫画などの現代日本の美術文化につながっているという辻の説に共感していた村上は、本連載において辻の「たまには自分で描いてみたら」との言葉に発奮し、自ら筆を手にして蕭白の描いた龍に挑んだそう。
その完成作が、雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン(2010)》です。
見返り、来迎図
《見返り、来迎図(2016)》は、国宝《阿弥陀二十五菩薩来迎図》をベースに描かれました。本作に描かれている阿弥陀像は、京都東山の麓に建つ永観堂のご本尊《阿弥陀如来立像(見返り阿弥陀像)》です。
猿梟図
猿は東博が所蔵する《猿猴図》、梟は根津美術館の《松梟竹鶏図》がベースとなっています。根津美術館の作品は本来、梟と鶏がセットの二幅対ですが、村上はこの《猿梟図(2024)》で、あえて別の一幅である猿を選んで梟に組み合わせました。
CLONE X×TAKASHI MURAKAMIシリーズ
「CLONEX」プロジェクトは、デジタルブランド「RTFKT」と手を組んで誕生しました。「クローン化した人間」がコンセプトとなっており、メタバース空間での3Dアバターとして利用されることを目的としています。
村上がキャラクターの目や口、ヘルメット、服などのパーツデザインを担当し、RTFKTはこれらのアバターを制作し、「The Sandbox」やその他のプラットフォームで使用可能にしました。
《ユニークロゴ ピンク ver》2023年
《アバター MLC StyleとHIROPON Style》2023~24年
《#6597 Lonesome Cowboy》2023~24年
《#19042 Hiropon》2023~24年
村上が生み出したキャラクターは多岐に渡りますが、私は《風神雷神図》など京都の絵師に挑んだ作品が気に入りました。
つづく